案内するよ。 ページ3
少女が転校して来た翌日、土曜日。授業は午前のみなので給食もなし、もちろんサボり一択だ。
なら道場に顔出せと煩いジイちゃんから逃げ出し、何か面白い事、それこそ喧嘩とか喧嘩とかねーかな、と近所をふらついていた。
「あれ、マイキーくん?」
すれ違いざまに掛けられた声の主を振り返れば、Aがいた。白無地のTシャツにデニムのショートパンツ、スニーカー。簡素な服装でも元が良いと様になるもんだ、と感心する。にしても、同じくらいの身長なのに脚長ぇーな。
「……A、だっけ」
本当は知っているけど。何となくむず痒くてとぼけてみたら、「うん。Aで良いよ」とにこり微笑まれた。
「お前もズル休み?」
「ううん。引越し手続きの書類、おばあちゃん間違えてたみたいでね。区役所に行かなきゃいけないのに迷っちゃったの」
マイキーくんは?と問い返され、特に用はないと態と素っ気なく返す。
「てか俺、佐野万次郎だから。万次郎って呼んで良いよ。その……Aはトクベツ」
「わかった。万次郎、素敵な名前だね」
高い位置に結われたポニーテールをふわふわと揺らしながら、Aはまた綺麗に笑った。かと思えば、あ、と短く発して肩に提げていたカバンから小さな袋を取り出した。
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作者名:カーター千之助 x他1人 | 作成日時:2023年5月6日 4時