3つ ページ3
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「もっと囁く感じのほうがいいんじゃない？」
「そこは流れるようにお願い」
羽生さんは予想以上にスパルタだった。
清塚さんとは共演しているだけのこともあってあまり注文はない。
尚更足は引っ張れない。
「そこめっちゃいい！」
「やっぱり、いい声してるね」
羽生さんのズルいとこはたまにこうやって褒めてくれるところ。その度に私の胸がきゅっとなる。
言われたところは忘れないよう楽譜にメモをする。
次までに完璧にしよう。
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あっという間に時間が過ぎ、今日の練習が終わった。
ホテルに戻り、私は早速練習を始める。
ここで切ってすぐ入るって、、我ながら難しい曲を書いてしまった。
一人で悪戦苦闘していると、いくつか気になる場所が出てきた。
やはりここは、羽生さんに聞くのが一番だが。流石に迷惑かな。もう夜の8時を回っている。
でも明日聞くのじゃ遅すぎる。
「………行くしかないか。」
意を決し、私は羽生さんの元へ足を進める。
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＿＿＿＿ｺﾝｺﾝｺﾝ
ドアをノックすると中からはーいと聞こえた。
「こんばんわ、Aです。」
楽譜とペンを持ち、挨拶をする。と、ガチャと勢いよくドアが開き羽生さんが顔を出した。
「どうしたの？」
「聞きたいことがあって…。」
チラッと楽譜に目をやると、入ってと返された。
お邪魔します。と小さく言って中に入る。
羽生さんはソファーに座り自分の横をポンポンと叩いている。
座れということだろう。
そこに腰を掛け、本題に入る。
「あの、ここを強く歌っちゃうと、歌詞と合わないんです。」
楽譜を指さしながら問題点を伝える。
「俺の解釈だとそうなっちゃうんだよな」
どうやら解釈のズレでこの問題が生まれたようだ。
顎に手を置き、うーんと言いながら考える素振りを羽生さんが見せる。絵になっていて、かっこいい。
少し見惚れていた、
「いっ、」
こんな時でも傷は容赦なく痛む。
お腹に手をあて傷を擦る。
すると突然、私の頬に手が伸びてきた。
ねぇ、と呟き
「この曲の本当の意味、教えて」
俺、知りたい、と羽生さんが真っ直ぐな目で私を見つめる。
断る理由はどこにもない。
「………この曲は、家族のために作りました。」
私は、ポツリポツリとこの曲ができたきっかけを話し始めた。
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作者名：ふーか | 作成日時：2019年8月26日 11時
