第七話「二度と」 ページ8
あの後全てを聞いた。川へ洗濯しに行った禿の子が、血だらけの私を助けてくれたこと。正直もう助からないと思っていたがこの人のおかげで私は命を救われた。
代わりに私の右腕はもう動かなくはなったが、命に代わるのであれば安いものだ。ただし困ったことがある。これから先何があるか分からないのに、戦えない身体になってしまった。これでは錆兎や義勇に会っても迷惑をかけるだけだ。使えない奴は置いていかれる。私はすでに用済みなのだ。
「…痕は残ってしまったわね」
「これくらい大丈夫ですよ」
私の頬に触れるお菊さん。私を助けて面倒を見てくれた人。私は花街で十分に休んで行きなさいと言われた。この恩は一生かけても返せないだろう。
「ダメよ。Aちゃんは女の子なんだから。こんな可愛らしいお顔に傷をつけてしまって」
私は完治するまで安静にしていた。三ヶ月を過ぎた頃体力もだいぶ戻った。お菊さんが手鏡を私に見せてくれた。鏡を除けば頬には大きな傷痕が残ってしまった。その傷は錆兎のようで、懐かしむように私は頬を手で撫でた。
「お菊さん、本当にあの時はありがとうございました」
「やあね、改まって」
私は手鏡を返すと深々と頭を下げた。お菊さんはそんな私を見て軽く流すが私はいいえと答える。お菊さんがいなければ私は死んでいた。私に、まだ生きろと言ってくれたような気がした。私はもう錆兎と義勇とは関わらない。だけれど今度はこの人に恩を返さなければ。
「お菊さん、私を妹として迎えてくれませんか?」
「!…Aちゃん…」
お菊さんは私の真剣な表情を見て戸惑っていた。妹。つまりは禿としてこの花街に留まるということだ。私は傷物だし右腕も使えない役立たず。芸もできなければ、お客を取ることもできない。それでもなにかお菊さんの手助けになれば。
「…Aちゃん…でも」
「身勝手だとは思います。ですが、恩は返させてください。お願いします」
私は畳を頭に合わせお菊さんの言葉を待つ。お菊さんはしばらく黙ったあと、顔をあげてと言われた。顔を上げればいつものように物腰が柔らかい笑みで私を見つめた。そして包み込むように抱きしめた。
「本当にいいの?きっと、大変よ」
「構いません。役立たずですが置いてもらえるのであれば、精一杯やらせていただきます」
私の真剣な瞳にお菊さんは微笑み、分かったわと声を出す。
「Aちゃん、これからよろしくね」
全ては、生きる意味を見出すため。
3469人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
❤︎ - 面白かったです〜!!!最後には少しうるっときました…笑もう3年も更新されていない事に驚きです。続きが気になる〜〜!!何年でも待つのでまた更新してくれたら私含め読者達ありがたいです!待ってますね。 (8月24日 21時) (レス) @page41 id: f6dfc22ed3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ - めっちゃ面白いです!!!更新待ってます!!!!!!!! (2022年3月22日 22時) (レス) @page41 id: 4673827fe0 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 続き!続きはどこ?!ねぇ?!((やかましい (2022年2月26日 21時) (レス) @page41 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
とうめい - 終わっちゃった〜…続きが気になります…更新待ってます!! (2021年10月3日 12時) (レス) @page41 id: 4fdb593f0d (このIDを非表示/違反報告)
りあむ(プロフ) - 終わり!?更新待ってます、、、 (2021年10月2日 20時) (レス) @page41 id: 5dcfb8d8c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜餅 | 作成日時:2019年11月17日 20時