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麻薬 gk ページ8

/gk(恋人)side


ああ、今日は本当にダメな日だ。
特に何があった訳でもないが、苦しくて、辛くて、ただただしんどかった。
痛いくらいにきつく閉じた瞼を、ゆっくりと呼吸しながら緩くしていく。
しかし途中で呼吸が狂い、また息を荒らげ、胸元の布を強く掴み、僅かな光さえ入れぬといっそうきつく目を瞑る。


「あーーー、しんどい」


口に出した途端、涙が止まらなくなった。
辺りも暗くなった午後10時過ぎ。バイトが終わって帰路につき、アパートの2階の角部屋に住むオレは、階段を登って廊下を渡り、家に帰るはずだった。
けど、たったそれだけのことが、階段を登りきる直前に足が震えてできなくなった。
その場で蹲り、抑えきれない嗚咽を響かせ、でかい図体晒して、いい歳して自分の感情を制御できないオレは、もし誰かに見られていたとしたら、酷く惨めに映るだろう。

ここで蹲っていたって邪魔なだけだ。どうにかして立ち上がって、せめて部屋に入らなければ。そうはわかっていても、身体がどうにも追いつかない。
しんどい。自分がどれだけ出来ない奴かを突きつけられるこの時間がしんどい。


「誰か助けてよ、」


『ガクくん、ここまで来れてえらかったね』


聞き覚えのある声に、先まではぴくりとも動かなかった頭ががばりと前を向いた。


「A、っ、A!!」


今の今まで泣きじゃくってたオレは、ずいぶん酷い顔をしていたと思う。けどAはそんな俺のことも、ぎゅうっと強く抱き締めてくれた。

同じ大学のAとは、少し前から付き合い初めて、オレの誘いからつい最近同棲を始めた。
大学では見れなかった普段の姿や、ふとした瞬間の表情に、知らないうちにオレはもっと惚れ込んで、自覚した頃には、Aがいないとろくに寝れなくなっていた。


『おかえりガクくん。遅いなって外出たら、ガクくんの声聞こえてきて、つい迎えに来ちゃったよ』


『家入ろ、』と柔らかく笑いかけて、オレの手を優しく引いてくれるAに、どうしようもなく淀んだ恋心が溢れ、荒みきった悲観は既に塗り替えられていた。

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作者名:404 | 作成日時:2023年9月18日 4時

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