Blend ko-chan ページ7
友達とのショッピング帰り、ふらふらと新宿の街を歩いていた。
世界征服でもしそうなビル、数え切れない人が出入りするバスターミナル、路上ライブをするミュージシャン。がやがやとした雑踏の中で踏み出した足の感覚が何だかぐにゃんとしていて、誰かの靴を踏んだことに気づいた。
「あ、ごめんなさい」
「いえ…」
振り向いて謝ると私よりも背の高い男の人。その顔に感じた既視感を有耶無耶にして、再び歩きだそうとすると、肩をガッと引き寄せられた。
「ねぇ…!Aだったりする?」
「えっ、そうだけど…」
「航平!渡辺航平!」
「嘘!こうちゃん!?」
自分の顔を指さして、うわっ!久しぶり!と満面の笑みを見せるこうちゃんは、最後に会った時から全然変わっていなかった。
二つ下のこうちゃんは、私が小学生のとき転校するまでずっと仲の良かった幼馴染みだった。泣き虫だったこうちゃんをいつも守っていたのは女の私で、「Aありがと」って毎回律儀に涙目で言われた記憶が蘇える。
私たちは、とりあえずゆっくりお茶でもしようと喫茶店に向かうことにした。
「変わらないね、この距離感」
こうちゃんといると何となく強い女でいなきゃいけない気がして、自然と早足で1歩前を歩いてしまう私をこうちゃんが笑う。
「こうちゃんの笑い方も全然変わらないよ」
「本当に〜?」
「ほら、その顔も」
まっすぐ育ってくれてよかった、と母親のようなことを考えていたら、目的地の喫茶店に着いた。丸テーブルを囲んで昔ばなしや互いの近況報告に花を咲かせる。
「もうこうちゃんも大学卒業か、時が経つのは早いね」
「そう、このタイミングで会えたのは運命みたいだなって俺的には思ってて」
「ん?どういうこと?」
「…俺ずっとAのこと忘れられなくてさ、いつかまた会えるって思ってたから今日会えて本当に嬉しい。やっぱ今でも好き」
突然の告白にたじろぐ。小さい頃と変わらないこうちゃんにさっきまで安心しきっていたのに、こうちゃんが私を見る目は、れっきとした1人の男性だった。
「…そっか、こうちゃんも大人になったんだね」
戸惑いの中で絞り出した言葉が、予想外の事態に高鳴る気持ちと混ざりあっていく。
「もう泣き虫な俺じゃないから、今度はAのこと俺に守らせて欲しい」
泣き虫こうちゃんが、こんなに男らしくなっているなんて聞いていない。真っ赤になってしまった私を見て、こうちゃんが真っ黒な珈琲を啜った。
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カルボン(プロフ) - ぶっく。さん» 正直言うと、須貝さんあたりで「あれ、あと二つもいけるか?」ってなっていましたが、頑張りました!(笑)ぶっくさんもさいかいからあい完結おめでとうございます。楽しみに読んでおりました! (2020年3月31日 12時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - はるむににさん» 無事完結しましたー!!今まで私の書くこうちゃんはだいたいヘタレだったので、今回は趣向を変えて。。「大人になったんだね」っていう言葉から着想しました! (2020年3月31日 12時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - フェレットさん» 今作も毎日コメントありがとうございました!!本当に支えられております。次作も是非!よろしくお願いしますね! (2020年3月31日 12時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - まず喫茶店テーマで7作品もこんなに綺麗に書けるカルボンさん、めちゃくちゃすごいです…!どの話もふたりの距離感がなんだか優しくて大好きです。これからも応援しています! (2020年3月30日 23時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
フェレット(プロフ) - かっこ良いこうちゃんは大好きです!次回も楽しみにしてます! (2020年3月30日 12時) (レス) id: 88923771a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カルボン | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月20日 0時