HotCoffee fkr ページ6
「いや〜、楽しみだね。このお店いい雰囲気じゃない?」
今日オープンした喫茶店の前で、福良さんがはしゃいでいる。顔の神経を全て使って笑うような、福良さんの笑顔が微笑ましい。
私たちは互いにコーヒーが好きで喫茶店を巡るのが趣味の、ただの友達。
福良さんに一目惚れをした私がようやく辿り着いたこの関係が、最近では少し物足りない。
「いらっしゃいませ、おふたり様ですか?」
「はい」
「只今のお時間カウンターのお席でのご案内になるのですが、よろしいでしょうか?」
「あっ、全然大丈夫です」
すっと私の前に立って、エスコートしてくれる福良さん。意外と大きな背中はいつになっても見慣れない。
「ホットのコーヒー2つ下さい」
席に座るなり、福良さんが迷わずオーダー。初めてのお店では1番シンプルなものを飲むのが私たちの流儀だ。
「1人ではカウンターに座れなかったんだけど、Aちゃんと一緒に巡るようになってから気軽にできるようになったんだ」
「私の存在価値ですね!嬉しい」
「そこに見出しちゃう?Aちゃんにはもっと大切な存在価値あるよ〜」
「えっ」
それ以上の、私が欲しい言葉を期待して見上げると、福良さんの視線はもう、メニューが書いてある黒板に移っていた。
サラッと心を鷲掴みにしては、笑って視線を逸らす福良さん。この人は、どこまでもずるい。
「お待たせしました、ホットのコーヒー2つです」
運ばれてきたコーヒーの香りは、今までのどのお店よりも深くて味わいがある。思わず福良さんと目を合わせた。
「いただきます!」
1口啜って分かる、これまでで最高の味。ぱっと顔を上げると、カウンターの奥にいるマスターと思わしき人と目が合った。マスターが笑顔で私たちの前に歩いてくる。
「ご来店ありがとうございます」
「めちゃくちゃ美味しいです!!これまでで1番!」
「ありがとうございます、これからもお似合いの2人で、末永くうちのコーヒーを愛してやって下さいね」
マスターの「お似合いの2人」という表現に私が顔を赤らめていると、隣から福良さんの声がした。
「いや、友達なんですよ。付き合ってないんです。ね?」
福良さんが私の方を見て笑う。その笑顔は私だけに向けて欲しい、と言っても彼はまだ私の隣にいてくれるだろうか。
今まで何度も言いかけた気持ちが、唇からこぼれ落ちそうになっては戻っていく。私の気も知らないで、隣で笑う福良さんが憎くて、憎くて、愛しい。
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カルボン(プロフ) - ぶっく。さん» 正直言うと、須貝さんあたりで「あれ、あと二つもいけるか?」ってなっていましたが、頑張りました!(笑)ぶっくさんもさいかいからあい完結おめでとうございます。楽しみに読んでおりました! (2020年3月31日 12時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - はるむににさん» 無事完結しましたー!!今まで私の書くこうちゃんはだいたいヘタレだったので、今回は趣向を変えて。。「大人になったんだね」っていう言葉から着想しました! (2020年3月31日 12時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - フェレットさん» 今作も毎日コメントありがとうございました!!本当に支えられております。次作も是非!よろしくお願いしますね! (2020年3月31日 12時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぶっく。(プロフ) - まず喫茶店テーマで7作品もこんなに綺麗に書けるカルボンさん、めちゃくちゃすごいです…!どの話もふたりの距離感がなんだか優しくて大好きです。これからも応援しています! (2020年3月30日 23時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
フェレット(プロフ) - かっこ良いこうちゃんは大好きです!次回も楽しみにしてます! (2020年3月30日 12時) (レス) id: 88923771a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カルボン | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月20日 0時