princess mzkm ページ4
3月は別れの季節。会社を寿退社する先輩や、近くのカフェの仲が良かった店員さんなど、私にも寂しい別れがいくつかあった。
先輩の退社のお祝いパーティから、一人暮らしの家に帰宅してため息をつく。ここ数週間、彼氏の颯くんとは会えていない。付き合ってから、こんなに間が空くのは初めてだ。
お医者さんを目指す颯くんが私なんかよりもずっと忙しいのは分かっているけれど、やっぱり寂しい気持ちは隠せない。颯くんのことを疑っているわけではないのに、底知れぬ不安感に襲われる日もある。
テレビから流れるニュースをぼーっと見ていた。もうすぐ桜が咲くらしい。いつかの颯くんとのお花見を思い出して、自然と涙が零れていた。
手の中でスマホが鳴ったのはその時だった。画面の水上颯の文字に飛び起きて、通話ボタンを押す。
｢颯くん？｣
｢あ、A、今からそっち行っていい？｣
｢今から！？いいけど…｣
｢ごめん、ありがとう｣
急な訪問に、慌てて部屋を片付ける。荒れ放題だった床にあるものをどけていると鳴り響くチャイムの音。早くも颯くんが来てしまった。
｢颯くんごめん、すっごく汚いんだけど｣
｢ううん、全然大丈夫｣
久しぶりの颯くんはスーツ姿で、身にまとった大人っぽいかっこよさにドキッとする。
｢どうしたの？急に｣
｢今日は報告があってね。僕、来年から1人前のお医者さんになれるんだ｣
颯くんははにかんだ笑顔を見せた。小さい頃からの夢を叶えた颯くんが、世界でいちばんかっこよく見える。
｢颯くんすごい！おめでとう！｣
｢ありがとう、Aが支えてくれたおかげだよ｣
何もしていない私も褒められて、なんだか上機嫌になる。夢を追う生活をしていなかった私にとって、颯くんの夢は私の夢でもあったから、自分の事のように嬉しかった。
｢そこでAに1つお願いがあるんだ｣
｢なになに？颯くんのお願いなら何でも聞くよ｣
颯くんはいいの？と笑って、少しもったいぶって切り出した。
｢これからもっと忙しくなるだろうし、たくさん迷惑もかけると思う。こんな僕を、ずっとそばで支えて欲しいんだ。だからさ、結婚しよう？｣
パカッと開いた小箱には、綺麗すぎる正方形のダイヤモンドをあしらった指輪。あまりのことに私は声も出ない。
｢あれ？何でも聞いてくれるんだよね？｣
いたずらっぽく颯くんが笑う。別れの季節、3月は私たちの新たな始まりの季節になった。
『ダイヤモンドをその指に』〜mzkm〜
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和奏(プロフ) - 初コメ失礼します。ymgmさんのお話、とても素敵でした。心理学強そうなイメージなので、人の心情には敏感なのかなぁと思ったり、思わなかったり… (2020年12月21日 8時) (
レス) id: ea0b227b7d (このIDを非表示/違反報告)
フェレット(プロフ) - ジャスコ好きです。奇跡の確率求めなくては(hnoさん) (2020年4月18日 9時) (レス) id: 88923771a6 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - フェレットさん» 田村さんとのその後はご想像にお任せします(*´`) (2020年4月17日 22時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
フェレット(プロフ) - 会話だけの話も良いですね、その後どうなったのでしょうね() (2020年3月29日 10時) (レス) id: 88923771a6 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - フェレットさん» どうも、幸せ供給隊長カルボンです（？） (2020年3月29日 0時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カルボン
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月5日 23時
