sakura kwmr ページ7
河村さんとのお出掛けは、行き先を決めないお散歩が多い。
狭い路地裏、小さな雑貨店、高架下の喫茶店。彼と巡るのは、ネット検索には出てこなくてもその街の深みを醸成するような場所たち。
｢街に融け込む、という感覚が近いんですかね｣
それまで形容しがたかったノスタルジーに、河村さんはそう名前をつけた。河村さんのセンス、言葉選び、雰囲気。気付けば全てに惹かれていて、出会ってから親密な関係になるのにそう時間はかからなかった。
｢Aさん、行きましょうか｣
｢はい｣
お決まりの言葉で連れ出されると、寒さの中にふんわりとした暖かさ。春がもうそこまで来ているらしい。
｢Aさん、今日は僕についてきてください｣
｢行きたい場所でもあるんですか？｣
私の質問は不敵な微笑みではぐらかされて、河村さんの隣を追って歩く。
｢ここ曲がってみましょうか…｣
いつもは周りを見ながらしみじみと歩くのに、今日の河村さんは行き先を決めているかのように早歩きだ。
｢やっぱり行きたいところがあるんですね？｣
｢…鋭いですね〜、まぁその通りです。どこに行くかはお楽しみに｣
口でつく嘘は上手いくせに、行動にはすぐ現れてしまう河村さんが可愛らしい。きっと私しか知らない彼の顔だ。
｢よし、じゃあAさん、目を瞑ってください｣
ただの住宅街の道角で、河村さんは私にそう声をかけた。言われた通り目を瞑ると、河村さんは私の手を引いてゆっくりと歩き出す。
角を曲がった感覚に思わず目を開けると、視界に広がったのは川に沿って並ぶ咲き始めの桜だった。
｢こんな所あるんだ…｣
｢意外と穴場でしょう？Aさんに見せたくて｣
｢確かにすごく綺麗ですね…。だけど、なんで満開の時ではなく、今日私を連れてきたんですか？｣
｢あぁ、それはですね…｣
一呼吸置いて、河村さんは静かにカバンから小さな箱を取りだした。薄い桃色の箱には、まるで桜のようにカットされたダイヤモンドの指輪が覗く。
｢河村拓哉と河村Aとして、満開の桜をもう一度見に来るためですよ｣
｢えっとそれは……｣
驚いて河村さんを見上げると、穏やかな表情で河村さんも私を見つめていた。いつもゆっくりと喋り始める彼の言葉を緊張しながら待つ。
｢河村Aになりませんか？僕と結婚してください｣
開きかけた蕾の花びらがひらひらと舞って彼の肩に落ちる。まだ誰もいない桜並木で、この瞬間が永遠に続けばいいのにと願った。
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はるむにに - カルボンさん» えっと、その言葉そのまま丸ごとお返しします。指摘する箇所なんてほんとに一個もありませんよ！大好きすぎて私は困っております。 (2020年3月7日 3時) (
レス) id: 70e291be9b (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - はるむににさん» はるむににさんのおかげで大好き摂取できてお話書けてるみたいなところあります。甘やかされすぎてる気がするので、ここおかしいなみたいな指摘があったらどうぞ、という気持ちです。 (2020年3月6日 23時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - ゆのさん» 最後の2人、ゆのさん得な2日間だったのではないでしょうか！個人的こだわりは、プロポーズの言葉×3の順番です。ストレートな僕と結婚してくださいが最後に来ると一気に河村さんらしいな、と思いました。今作もお読み頂きありがとうございました！ (2020年3月6日 23時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - フェレットさん» 河村さんなら国際結婚しても不思議ではない…（？）最強の遺伝子を持った子供の顔が見てみたいものです。 (2020年3月6日 23時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - 燕子花さん» お気遣いありがとうございます。しっかりとした睡眠をとりたいと思います（笑） (2020年3月6日 23時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カルボン
| 作成日時：2020年3月1日 0時
