asscher sgi ページ6
北風の冷たい、冬真っ只中。須貝さんと私は今日、イルミネーションを見に行く。ずっと研究で忙しかった彼だがようやく一段落したらしく、今日は久々の遠出だ。
車で迎えに来てくれた須貝さんと、目的地まではつかの間のドライブデート。須貝さんといると1秒だって退屈な時間なんてなくて、彼と出会ってから私の顔には笑いジワが増えたかもしれない。
｢着きました〜、ちょっと座ったまま待っててね｣
須貝さんは車を降りて助手席側に回ってドアを開けてくれる。こういう優しさが何よりも好きだ。調子に乗るから言わないけど。
車から降りて少し歩くと、一面にカラフルな異世界が広がった。あまりの綺麗さに言葉を失った私。しばらく無言でイルミネーションを眺めていると、耳元でシャッター音が響いた。
｢やばっ、音鳴っちゃった｣
｢何してるの？｣
｢え？もちろん俺の新たな待ち受け画面作成｣
｢盗撮禁止！やり返すよ！｣
ムキになって私がスマホを取り出すと、須貝さんはとびきりのキメ顔をした。なんだか面白くて笑いが込み上げてくる。
｢A笑うなよ〜、俺のキメ顔そんなに面白いの？｣
私がシャッターを押したのは、須貝さんもつられて笑ったその瞬間。フォルダに収まったクシャッとした笑顔は今日から私の待受だ。
｢すっごく面白い｣
｢それは喜んでいいやつ？｣
｢いいやつ｣
じゃあ良かった、とまた笑顔になった須貝さんは不意に私の手を取って、コートのポケットに入れた。
｢やっぱ寒いね、あったまろ｣
｢そうだね｣
普段はここまでバカップルでは無い私たち。ひとつのポケットと恥ずかしさを共有したまま時間は飛ぶようにすぎ、帰る時間になった。
｢大丈夫？忘れ物ない？｣
｢多分ない！｣
そう答えた私に、須貝さんはチッチッと指を振った。
｢残念！Aさん、須貝のポケットに忘れ物をしております｣
｢えっ、なんか私持ってたっけ？｣
｢手入れてみて｣
いつになくソワソワとした彼の言葉に従ってポケットを探ると、明らかに高級そうな小箱がでてきた。
｢開けて？｣
目に入ってきたのはダイヤモンドの指輪。これはもしかして、と須貝さんの顔を見上げる。須貝さんはシャツの襟をただして真っ直ぐに私を見つめた。
｢A、俺と結婚してくれますか？｣
どんなイルミネーションよりも眩しい、煌々とした輝きが私の指にゆっくりと点る。答えはもちろんYESだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 226人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるむにに - カルボンさん» えっと、その言葉そのまま丸ごとお返しします。指摘する箇所なんてほんとに一個もありませんよ！大好きすぎて私は困っております。 (2020年3月7日 3時) (
レス) id: 70e291be9b (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - はるむににさん» はるむににさんのおかげで大好き摂取できてお話書けてるみたいなところあります。甘やかされすぎてる気がするので、ここおかしいなみたいな指摘があったらどうぞ、という気持ちです。 (2020年3月6日 23時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - ゆのさん» 最後の2人、ゆのさん得な2日間だったのではないでしょうか！個人的こだわりは、プロポーズの言葉×3の順番です。ストレートな僕と結婚してくださいが最後に来ると一気に河村さんらしいな、と思いました。今作もお読み頂きありがとうございました！ (2020年3月6日 23時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - フェレットさん» 河村さんなら国際結婚しても不思議ではない…（？）最強の遺伝子を持った子供の顔が見てみたいものです。 (2020年3月6日 23時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - 燕子花さん» お気遣いありがとうございます。しっかりとした睡眠をとりたいと思います（笑） (2020年3月6日 23時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カルボン
| 作成日時：2020年3月1日 0時
