詐欺師 TheLastBorder3 (ページ40)

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静寂ページ40

気がついたら、窓の外の街の上空にはうっすらと霧が掛かっているように白くなっていた。夜明け前である……ということに気がついたのは、ベッドで起き上がって目を擦った後だった。

……そういえば、昨日はかなり動いたはずだったのだが、体も何も洗わずに眠ってしまっていた。そのせいか、体がややベタついていて気持ち悪い。
そういえば、昨日の夜にレイが風呂に入っていた。その残り湯があれば、それを使おうと、風呂場へ歩みを進めるが……嫌なことをひとつ思い出した。

『君はワープ癖が人より強い』

ワープ癖……少しでも意識を持って反射物に顔を近づけたらアウトなのだとか。
……顔をつけなければいいんだ。

そう思いながら風呂場へと足を踏み入れる。そこは思ったよりも遥かに広く、快適だった。レイが嬉しそうな顔をするのも頷ける。湯船には湯が張られており、いつでも入れるほどの温度であり、既にジャクジーも起動している。簡単に体を洗い、湯の中に体を沈める。よく考えれば、ジャクジーがあるのだから水は反射しづらいのだった。
それがわかったとたんに体の力が溶けていった気がした。

「……ぉ」

風呂場の扉が開かれる。そこに立っていたのは……

「な、なによ……」

「こっちの台詞だよ、なんだ今の変な声は」

レイが言う通り、自分でも情けなく感じるほどの可笑しな声が私の口から無意識に漏れていた。それが更に私の体を熱くさせる。

「僕は、女の子との付き合いがやっと終わったから今お風呂に入るだけだよ」

「あのときに入っていなかったのか」

「……アフター入っちゃったから」

ホストというのも、思っていたよりも厳しそうな仕事である。こんな明朝まで接客をするのは当たり前なのだとか。詐欺師ほどでは無さそうだが……何のスキルも持たない人間は、易々とホストの仕事に手を出してはいけないようである。

会話をしている間にも、自然とレイのむき出しになった肌へと目を向けてしまう。薄目を開けながら、腹筋、足、胸、首筋……
服を着たままでは分からなかったが、とても引き締まっていてカッコいい体である。体と顔だけならば、本当にモデルを目指しても可笑しくはない……だがこの男はホストになった……
不思議なものだ。

「クレアって、中々良い体してるよね。若々しくて、艶やかで、健康って感じ」

いつの間にか見られていたのだ。まさか同じことを考えているとは思わず、穴に入りたくなる気分になった。