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六話 ページ17




 コンサートホールに行くとちょうどデラクルスが歌っているところだった。彼と踊っている紫のドレスの女性を見たAは仰天する。
 さっきミゲルと一緒にいた人だ。じゃあ『緊急の用事』ってショーの打ち合わせだったのかも。

 ♪ 哀しきジョローナ、ジョローナ
  空のごとく蒼き
命さえ惜しくはない あなたの為なら ♪

 見事なデュエットに観客はすっかり盛り上がっている。ふとAが隣を見ると、デラクルスを見つめるアマリアがどこか切ない表情を浮かべていることに気づいた。
 今は声をかけないほうがいいと察したAはステージに視線を移す。

 やがてデラクルスが退場すると彼女は小さく溜息をついた。

「なんだか昔を思い出してしまったわ。ああA、来てたのね。あの人と何か話した?」

「うん。一つ約束してきた」

「そう」

「ずっと憧れてた。彼は僕の心の支えだった。絶対忘れない」

「ええ、忘れないで……」

 そろそろ行きましょう、とアマリアがAの肩に手を掛けた時、

《こいつは危険だ!》

 ステージ後ろのスクリーンが突如、舞台裏にいるデラクルスを映しだした。

《お前の写真を持たせて生者の国に帰すと思うか!? お前の思い出が生き続けるじゃないか!》

 どうしたの? それに後ろにいるのはミゲル?

《この卑怯者!》

 ミゲルが叫び、Aは呆然とスクリーンを見つめる。

《俺はエルネスト・デラクルス。史上最高のミュージシャンだぞ》

《本物のミュージシャンはヘクターだ。お前はヘクターを殺して曲を盗んだ男だ!》

 画面のミゲルの言葉に観客たちは一斉にざわめいた。Aはもはや言葉を失っている。
 殺した? 曾々お祖父ちゃんがヘクターを殺した? 違う、何かの間違いだ。そんなことするはずない。

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(プロフ) - 更新頑張ってください!! (2020年2月22日 4時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - 娘であったお婆ちゃんが悲しそうにしていたのは少し切なかったですがそれでもひいお婆ちゃんは無事にお父さんとお母さんの側に行けたので良かったと思います。そして良い家族に囲まれて幸せだったと。 (2018年5月12日 10時) (レス) id: b9ee30de80 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - 私も今回のディズニー映画は漫画が本音を言ってしまえば可愛くないのでそれでもディズニーは好きなので暇潰しとして見ようと思ったんです。そしたら凄い感動したので見て良かったなと今では思います。ただ残念な事に家族の一員であるひいお婆ちゃんが亡くなっちゃって (2018年5月12日 10時) (レス) id: b9ee30de80 (このIDを非表示/違反報告)
ミラージュ・アリーゼファー(プロフ) - ポチさん» 観終わったらまた観たくなる映画でした!ほのぼの系かと思いきやミステリー系で、予告と違っててはまりました! (2018年5月11日 21時) (レス) id: a7910e6428 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ - 初めまして。リメンバーミー9回も見たって本当ですか?凄いですね。私も一昨日見に行きました。生きていた頃のヘクターが格好良かっただけでなく、ストーリーも凄い良かったので感動しました。私ももう一回見たいなと思いました。 (2018年5月11日 20時) (レス) id: b9ee30de80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミラージュ・アリーゼファー | 作成日時:2018年4月8日 23時

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