39.崩れ落ちる ページ41
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1人で家路をとぼとぼ歩いていると、ふと、前方に人影が見えた。
「……誰だろう?」
ブレザーを着た男子だから、どうやら、風舞の生徒では無さそうだ。でも、私の家は風舞から徒歩10分。風舞の生徒しか歩いていないはずなんだけど。
──え?
もしかして、あのブレザーは……!
髪型も、髪色も、背の高さも、姿勢の癖も、ひとつ気づけば次々に納得がいって、私に変な期待を抱かせる。胸が高鳴り、つい急ぎ足に、駆け足になる。
さらに近づくと、人影が振り向いて……
私は、息を呑んだ。
ずっと、ずっと会うのを待ち焦がれていた人。
「ごめんね」って、「ありがとう」って、言いたかった人。言わずに、置いてきてしまった人。
思い出さない日なんて、1日たりとも無かった人。
何回謝っても、足りない人。
その人が、すぐ目の前に立っている。
彼が私に気づいて、視線が交錯する。あの、透き通る紫水晶のような綺麗な目が、私を映して、大きく見開かれる。彼の唇は微かに、そして確かに、こう動いた。
やっと、また、会えた──。
その瞬間、いろんな感情をせき止めてきた壁が、音を立てて崩れ落ちた。
視界が滲む。どうやら、私は泣いてるらしい。泣くなんて、久しぶりで変な感じ。そのまま、その場に膝から崩れ落ちる。
彼が、近づいてくる。私の前で立ち止まると、しゃがんで顔を覗き込もうとした。泣き顔を見られまいと右腕で隠す私の肩に手を添え、何もできなくてごめん、とささやく。
もう一度、あの名前で呼んで。楽しかったあの日々は、嘘じゃないと教えて。鳴宮くんも、竹早くんも、もう友達という拠り所にはできない。君が、唯一の頼り。最後の砦なの。
震える声で、彼の名を呼ぶ。
「愁、くん……」
「……風舞に、行ったのか」
「うん」
「A……本当に、ごめん」
「愁くんは、悪くない。ナミくんも、セイくんも。でも、2人は……私なんか、とっくに──」
喉が、塞がる。
言ってしまったら、私の勘違いが、否定のしようがない事実になってしまう気がして。
でも私には、愁くんに隠し立てをするという選択肢は、無かった。
「──わすれていた、の」
震える私の背中を、愁くんはそっと、優しくなでてくれる。
「……そうか」
ごめんなさい、愁くん。
もしも神様がいるなら、どうか、これが夢じゃありませんように。愁くんまで私を忘れませんように。
影で生きてた私に光が当たった日々が、嘘じゃありませんように。
私は馬鹿みたいに泣きながら、そう、祈っていた。
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Mashiro Lio(プロフ) - そうなんですね!私はこの間友達に相談したら、「いっそのこと全員分書いちゃえ!」って言われました笑笑 (2019年4月13日 17時) (レス) id: 6bdf3daa52 (このIDを非表示/違反報告)
芋ケッピー(プロフ) - 誰を落ちにするかは、私も悩みに悩みましてアンケートにて決まりました笑 (2019年4月12日 23時) (レス) id: 1297cf1d5a (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - ありがとうございます!実は誰落ちか未定&すごく長くなりそうな予感しかしないので少し不安(笑)なのですが、そう言っていただけるととても励みになります!ご期待に添えるよう精一杯頑張ります! (2019年4月7日 10時) (レス) id: 6bdf3daa52 (このIDを非表示/違反報告)
芋ケッピー(プロフ) - 続きが気になります!湊くん、静弥くん、愁くんとの関係性もまたまた気になります!更新楽しみにしています^_^ (2019年4月7日 8時) (レス) id: 1297cf1d5a (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - メイリさん» ありがとうございます!こうやって小説上げるのは初めてなので至らない所もあるかとは思いますが、ちょっとずつ頑張っていこうと思います! (2019年4月2日 7時) (レス) id: 6bdf3daa52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mashiro Lio | 作者ホームページ:http
作成日時:2019年3月4日 22時