おはよう、Limnanthes【あんスタ】

4月◇私の勉強事情 ページ26

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｢う〜ん……｣


『S1』を控えた『紅月』のレッスン中、休憩時間にて。

私は、頭を抱えてうなっていた。


｢A殿？ まるで悪夢にうなされるごとく唸っておられるが、いかがなされたか？｣

｢うにゅ〜……いやこれ、2年生には超難しい……｣


私が｢む〜｣だの｢うにゃ〜｣だのうなりながら言うと、神崎くんはムッとして返す。


｢なんだと？ ならば我に話してみるがよい。必要なら蓮巳殿や鬼龍殿に相談して、必ず解決してみせよう！｣

｢ん〜、そこまで言うなら……。じゃあ、これわかる？ 2年生にゃ、かなり難しいと思うけど……｣


ため息をついて、私は手近な白い紙にさらさらと数式を書く。そして神崎くんに見せたのは、


｢y=sinθｰcosθ-sin2θ+1をx(x=sinθｰcosθ)を用いて表せ。また、0≦θ≦2πでyの値が実数になるとき、その値の範囲を示せ｣




｢ねっ、難問でしょ？ 私にもさっぱりわかんない。てか君ら、三角比は習ってても三角関数はまだ習ってないっしょ｣


むむ……と考え込む神崎くんの前から紙をどけて、ため息をつく。


｢あ、じゃあこっちにする？ 君たち勉強が本業じゃないから、これも難しいと思うけど｣


そう言って私が書いたのは


『大気圧のみを利用して水は理論上最大何mまで持ち上げられるか』




｢こっちは私、ノーヒントでも多分わかる。トリチェリの真空の値は覚えてるから。でも絶対めちゃ時間かかるし、夢ノ咲の5教科のレベルじゃ2年生にはかなりきつい｣

｢なっ、我らを侮辱するか!?｣

｢いやいや、全くもって！ むしろノーヒントで解けた人はなんでK高来なかったのレベル。これ、K高の2年生の化学の授業プリントの内容だもん｣


友達にもらった〜。

そう言うと神崎くんは、むう、と押し黙ってしまった。

K高、この地域では有名な進学校だからな。まあ全国的には、どの県にも2,3校くらいあるレベルだけど。



私が通っていたK高は、偏差値70オーバーのハイレベル公立校。毎年、東大や京大に合格者が出るような所だ。
この辺の中学で良い成績をとる子はみんなK高へ行くし、K高生って言ったら小学生にもリスペクトされる。それくらいに進学校なのだ。

ただし当然、入学したら毎日きっつい勉強漬けの青春。リア充してる人もいるにはいるけど、大半の人はそんな暇などないのが現実だ。


そのK高から夢ノ咲に来た私は、塾で勉強を補っている。家から自転車で10分の集団塾と、歩いて2分の新しくできた個別指導。
個別の方は近くにあるので、遅い帰宅でも授業や自習ができる。ありがたや。

その2･かなり面倒なあれこれ→←その9・……それ以上ツッコむ勇気は無い。

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