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104. 沈黙の少女 by K / 処刑 by A ページ9




「それより、この後ドリフェスに出るのだろう、支度くらいしろ。薬も飲め。また体調を崩して【DDD】に出られなくなる、なんてことがあってはならないだろうが」


【DDD】という語に、Aがぴくりと震える。


「おや、どうしたんだい?」

「…………ぁ……て」


微かに、喉を震わす。
そこを本人は、文字通り鷲掴みにした。


「……か、きゃ」

「『離して、行かなきゃ』って、何か用でもあるのかい?」


長い髪が陽光を反射して、こくん、と頷く。

すると英智は、怖いくらいにあっさりとAを解放した。


「はい。引き留めちゃってごめんね、また生徒会室に遊びに来てほしいな」


英智の膝から床へと音も無く着地したAは、頷くことも何か言うこともなく、ただどこかへと走り去っていった。




〜〜〜〜




屋外ステージは、既に設置され始めていた。


私は、混乱して……ひどく、怯えていた。


一方的に告げられた『処断』。

それは確実に『Trickstar』を殺すもの。まさに『バラバラ殺人』だ。


そして、Aを見る、あの生徒会長の目。



――ああ、思い出すだけでぞっとする。



世の中には甘い毒というのがあるらしい(Aが言ってた)が、まさにその『甘い毒』という言葉が相応しい。




こうしている間にも『Trickstar』の間には、小さな亀裂が入っていく。

人が集まってきた頃に、皆が私を守るようにして、壁になってくれた。そのときは、少し安心できた。
人混みに入るときは、いつもそうだった。その『いつも』が、守られていたから。



でも、提案を受け入れれば、この小さな、かけがえのない平和な空間が失われてしまう。彼らの愛情そのものの、私の安全地帯が。


提案に乗るか決めるのは彼らだ。でも――


「偉そうに語っていたものだが、長らく生徒会長は入院していて、その『ユニット』も活動休止していたはずだ。病み上がりで勝てるほど、ドリフェスは甘くないぞ」


ごった返す大群衆の中で、北斗くんがステージを見ようと背伸びする。後ろから、私達も精一杯爪先立ちをして、人の海から頭だけ出す。




―――不意に、大きな影が差した。


「さて、どうかのう?」

「「朔間先輩!」」


それは、私達の希望……のはずだった、が――。




−−−−




彼の話を、聞いた。
これが絶望か、と思った。


「……おぬしらが苦労して、死力を振り絞って動かした時計の針が、強引に戻されてしまった」


そのとき。

インクの掠れたペンで無理やり書くような叫びが、ほとばしった。




「―――待って!!」

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Mashiro Lio(プロフ) - 迷えるJK〜dark side moon〜さん» 簡単な方(ただし難しい方と同レベル)に2年の終わり頃決めました。私の「やりたい事」と職業は無関係ですが、高収入は資金調達に必須ではあるので。描写は現実味に拘っているので、そのお言葉嬉しい限りです!今後も本作をよろしくお願い致します。長文失礼致しました。 (2021年3月23日 12時) (レス) id: 3124529ae6 (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - 迷えるJK〜dark side moon〜さん» そう言ってくださってとても嬉しいです!大学につきましては私の場合、当初やりたい事が無かったので「国家資格を取れる、かつ狙える中で最も高所得を得うる所」で決めました。2つ選択肢があり、ギリギリ難しい方を目指すか確実にもう一方で受かるか迷いましたが結局、 (2021年3月23日 12時) (レス) id: 3124529ae6 (このIDを非表示/違反報告)
迷えるJK〜dark side moon〜 - (追加)いつも小説の高校生の描写などが素晴らしく、きっとMashiroLio先生は賢い方なのだろうなぁ、と思って質問させていただいた次第です。お話にも関係のない話ですし、迷惑でしたら無視してくださって構いません。 (2021年3月23日 11時) (レス) id: ffd50faadb (このIDを非表示/違反報告)
迷えるJK〜dark side moon〜 - はじめまして!いつも小説楽しみにしてます^^私、MashiroLio先生の考え方に憧れていて、将来代替え出来ない人になりたく、次高3で進路(大学)選びに迷っているんですが、先生はどうやって決めましたか?もしよろしければ学びの方面など教えていただきたいです! (2021年3月23日 11時) (レス) id: ffd50faadb (このIDを非表示/違反報告)
苺バニラ(プロフ) - Mashiro Lioさん» 迷惑になりそうだと思いコメントを削除した瞬間に返答がきたので、驚いてしまいました……。ある意味ではタイミングがバッチリですね(笑)もし貴方様がお暇な時は、ぜひボードにいらしてください♪好きな時間に書き込んでくださいね! (2020年10月17日 16時) (レス) id: ead3d047d6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mashiro Lio | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年2月29日 11時

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