22話 ページ23
(side Stakeholder)
警視庁サイバー犯罪対策課に珍しい来訪者がやってきた。
大柄の、強面の、いかつい男が。
男は懐から警察手帳を取り出すと、部屋全体にそれを見せつけるようにして言った。
「警察庁の者だ。平泉寛明警視に話がある」
警察庁の者だ。
警察庁の者が、ここに来ることなど普通ではありえないことだ。彼たちは、ここに深入りはしないし、もしサイバー犯罪のことで何か協力を求めるのならば、それこそ警察庁内の組織で済ませてしまうのだから。
警察庁の者は、「サイバー犯罪対策課」ではなく、俺に用があると言う。
“警察庁”
その言葉に室内が一瞬騒つくが警察庁の人間と名乗ったその人物の有無を言わさぬ目線に、室内にいた者は皆口を閉ざした。
「寛明さん。」
私の隣に立っていた和希が、不安そうな顔をしながら、俺に小声で声をかけた。
「あの警察庁の男、寛明さんを呼んでますけど、寛明さんの知り合いなんですか？」
「…知り合いではねェな。けど俺に用があるのは確かみてェだな」
和希は、不安そうな顔を今度は険しそうな顔に変えた。
俺はそれまで座っていた椅子から立ち上がる。
突然立ち上がった俺を、警察庁の者は目を細めて見ていた。
「あんたが
警察庁の男は、さも驚いたように言う。
だが、警察庁の人間が他の組織の人間に会う時は、その人間の素性を調べるのが流儀、俺の顔を知らないというのはありえない。
小芝居に疑問を抱きつつも、男に向き合った。
「ああ、俺が平泉寛明だ。」
男は確認をとると、ニコリとも笑わずに言った。
「俺について来い」
俺はあからさまに眉を寄せるが、この際はついていく他の選択肢はない。
俺は対策課の人員に向き直った。
「……すまん、ちょっと席外す。いいか、何かあったら和希に聞いて対処してくれ。」
「はい！！」
そして、和希に向き直る。
「悪いな、和希。」
和希は、清々しいくらいの顔で笑った。
「いえ。任せてください」
部屋を出ると、歩きながら開口一番その男は身分を名乗った。
「急にすまん。先程も言ったように俺は警察庁の人間だ。訳あり所属は申せないが、名前は松山博人。階級はあんたと同じ警視だ」
「………松山さんな。そんでよ松山さん、何の用だ？」
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作者名：神風 | 作成日時：2018年5月22日 18時
