076:癒しと決心 (haruka) ページ27
「え…ﾕﾉさん帰ってないんですか？」
「うん。ツアー始まったし、忙しいんだよ」
「でもﾁｬﾝﾐﾝｵｯﾊﾟは…」
「それぞれの過ごし方があるのよ。それよりｿﾕﾝ、ｼﾞｭﾈとはうまくいってる？」
「え？」
「付き合ってるんでしょ？」
「まさか！遥ｵﾝﾆおかしな事言わないでくださいよー！」
全力で否定している割に
顔が真っ赤になっている。
ｿﾕﾝは落ち着いて見えるけど
時々見せる可愛い反応が
私に癒しを与えてくれる。
「フレンチって、やっぱり一筋縄ではいかないですね」
「そうね、料理は日々勉強と研究の繰り返しよ」
「Aｵﾝﾆが、遥ｵﾝﾆの経歴がすごいって言ってたんですけど」
「そんな事ないよー」
「一番最初に興味を持った事は何ですか？」
「うーん何だろ。変な言い方だけど、お金かな？」
「え」
「あはは意外？まぁ、お金欲しい！みたいなんじゃなくてね、子供ながらにこの紙切れにどんな価値があるんだろうって。うちね、両親が元銀行員で、おじいちゃんが不動産経営で…」
「…す、すごい金融一家……」
「おまけにおばあちゃんが投資家だった」
「どぎついでしょ」
「話だけ聞いてるとなんかギラギラです…」
「あはは…まぁ、そういう家に生まれたからかなぁ」
「みなさんｵﾝﾆがこの国で生きる決心した事、どう言ってますか…？」
「おじいちゃんとおばあちゃんはハワイで、両親は今…フランスかな？」
「え」
「自由なのよ、みーんな。だから私が韓国に永住するーって言った時も、ふーん、頑張って！みたいな…」
誰もが私の家族の話を聞くとそういう顔をする。
ｿﾕﾝだって例外なく心底驚いている。
だけど、彼女には続きがあった。
「ハワイとフランス…なんか、それぞれ遠い地なのに家族が住んでるとなれば、沖縄と北海道ぐらいの感じですね」
「え？」
「あ、日本で言えば、ですけど」
やっぱり私を癒してくれるのだ。
ﾕﾉが帰って来ないわけは知らない。
だけど、私が倒れたあの日に
理由がある。
私がそれを詮索して、もしﾕﾉの足手まといになったら？
それは一番やってはいけない事だ。
だから
私はここで、彼が帰る場所で
ただ待つ事にした。
それが私にできる唯一の事だから。
そう、決めた。
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作成日時：2017年11月6日 23時
