077:知らない人 (haruka) ページ28
「オンニ、そろそろ帰ります」
「うん、また来週ね〜〜」
週1でソユンに料理を教えている私は
彼女を送り出した後、店に戻った。
オーナーが18時予約の用意に取り掛かっていた。
「遥、早かったなー」
「すみません、すぐ代わりますね!」
「いいよ、これは俺が」
「でも…」
「いいって。ほら、店開けてきて」
「了解です」
看板をセットしながら
ふと見慣れた海の方へ視線を投げた。
「ん?」
普段の景色に
明らかに馴染んでいない後姿
長い髪が 緩やかに揺れて
まるで私の存在に気付いたかのように
ゆっくりと振り返る。
あの人じゃない
そう思うと同時に
私の中にジワリと広がる違和感。
「遥?どうしたの?」
「あ…」
「疲れてるんじゃない?今日は2組しか予約入ってないし早めに休みなさい」
「…大丈夫です。ちょっとボーっとしてただけ」
カラフルな野菜がたくさん詰まった籠を抱えたオンニが心配そうに私の肩に手を置いた時
オンニが私の視線の先に
あの女の人を捉えたのが分かった。
「今日のお客様かしら?」
「…そうかもしれませんね」
「あら…日本人みたい」
「え…」
***
「お待たせしました」
「うわぁ…素敵…」
その人はオンニの言う通り日本人だった。
物静かな落ち着いた顔立ち
決して一般の人とは明らかに違うオーラ
「決めた。私この仕事受けるわ」
「そっか。決心してくれて良かったよ、奈々」
奈々と呼ばれた彼女は
上品な笑顔を浮かべて
私が運んだ料理を口に運んだ。
「彼とはいつ会うの?」
「今忙しいみたいだから…早くて来週かな?」
「ふーん…楽しみね」
私が韓国人で、日本語が分からないと思っているのか
二人は日本語で、たくさん日本の芸能人の話をしていた。
もちろん聞こえないフリをして
私はその後も二人に料理を運んだ。
マネージャーと思われる男性が会計をしている間
彼女はさっきみたいに
じっと夜の海を見つめていた。
「ありがとうございました」
二人が店を出る時
彼女は ふと振り返って私を見た。
「あなた、日本人?」
「え…」
突然投げられた言葉に戸惑っていると
「また、来ます」
彼女は私の目を見て
ニッコリ 微笑んだ。
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作成日時:2017年11月6日 23時