052:私を探してください。 ページ3
-どうして……僕を忘れてしまったんですか。
「どうして…忘れてしまったんだろう」
心にｽﾞｼﾘと圧し掛かる言葉。
もどかしいのは
私より きっとﾁｬﾝﾐﾝの方だ。
『…Aちゃん、無事に到着したの？』
「遥ちゃん…」
『どうしたの？疲れちゃった？』
「…ちょっとだけ」
『ﾁｬﾝﾐﾝは？』
「…」
『Aちゃん？』
気付いたら時差の事も忘れて
遥ちゃんに電話していた。
仕込みもあるから当然起きてるよー。
優しい遥ちゃんの声が
心にじんわり染み込む。
『ﾁｬﾝﾐﾝ…そんな事言ったの？』
「まぁ…でも…言わせたのは私でしょうけど…」
『お互いに限界なのかな』
「…そうかも」
『でも3か月で記憶が戻らなかったら…本当に別れるの？』
「別れるも何も…私は私の事が分からないから」
『…確かに。でもね、きっと全部がﾁｬﾝﾐﾝの本音よ？』
「全部？」
『そう。どうして僕の事を忘れてしまったのって心の叫びも、Aちゃんを思い出の地に連れて行こうと思ったのも…このまま記憶が戻らなかったとしても最初からやり直せばいいと思っているのも』
「…」
『全部本音。それをAちゃんがどう受け止めるかはAちゃん次第だけど』
「私は……」
『そうやって無理に答えを出そうとしなくていいの』
「…」
『これも運命でしょ、ｱﾅﾀたちの』
-運命-
また一つ 心にｽﾞｼﾘと圧し掛かる言葉。
静かに揺れる波音に心を任せて
目を閉じたら
少しだけ楽になれる気がした。
-どうして……僕を忘れてしまったんですか。
もしも私がﾁｬﾝﾐﾝだったら…
きっと同じ事を思うはずだ。
それも一回だけじゃなく 何度となく
もしかしたら 記憶が戻るまで
エンドレスに…
意地を張る様に出てきたﾎﾃﾙの部屋。
見上げたら ぼんやりと灯が点っていた。
-ﾁｬﾝﾐﾝ、まだ 起きていますか？
そっと部屋のドアを開いたら
宣言通り ﾁｬﾝﾐﾝがｿﾌｧｰに横になっていた。
「起きてたんですか？」
「寝ていてほしかったですか？」
「それ…生まれつきですか？」
「…何が？」
「素直じゃないところです」
「…生憎、生まれつきです」
「さっきは素直に言ってくれたじゃないですか」
「…」
「どうして…僕を忘れてしまったんですか」
「…」
「一緒に…探してください」
「…」
「私を…探してください」
…仕方ないですね。
ﾁｬﾝﾐﾝは
そう言って 嬉しそうに笑った。
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作成日時：2017年11月6日 23時
