All of me. (ページ48)

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047:心のどこか CM ページ48

瞼の裏が明るい。

結局あのまま寝てしまったのか…

目を開けると

僕に背を向けて眠るAが映る。

「さっきまで起きてたんですよ」
「…そうですか」
「もう到着しますよ」

にこやかに登場したCAが

そっとAにﾌﾞﾗﾝｹｯﾄを掛けてくれた。

眠る小さな肩を引き寄せて

抱きしめたい。

そんな衝動を抑えるように

窓の外を見ると

久しぶりの大都会がすぐ近くに迫っていた。

今日はこのままNYﾃﾞｰﾄしたい気分でもあるけど

次の飛行機まであまり時間もない。

『ﾊﾞｰﾘﾝﾄﾝはとてもいい街よ、ﾁｬﾝﾐﾝ』

まだｱﾒﾘｶを訪れた事のなかった僕に

そう教えてくれたのは他でもないAだ。

『NYやﾎﾞｽﾄﾝ、ｻﾝﾌﾗﾝｼｽｺだって、ｱﾒﾘｶはどこも素敵だけど私はあの街が一番好きなの』

あの頃の僕は

僕の知らない世界を知る年上の恋人に

少しだけ嫉妬した。

『いつか一緒に行けるといいなぁ』
『…そんなの無理に決まってるじゃないですか』
『そうだよね…ｱﾅﾀはこんなに忙しい人なのに、ごめん』

あの時Aは笑ってたけど

本当は素直になれない僕の言葉に

傷付いていたかもしれない。

「…ごめん」

今さら謝ったところで

今の彼女に僕の記憶はｶｹﾗすら残っていない。

これがもし罰だとしたら

これからの僕の人生をすべてかけてでも

Aが失くしたｶｹﾗを集めよう。

いつしか

そう思っている自分がいる事に気付いた時

少し心が軽くなった。

「あ…」
「おはよう」
「起きてたんだ…」
「今起きた。もう少しで着くよ」
「そっか…」
「喉乾いてない？」

久々のNY

大都会の匂いを味わう間もなく

小型の飛行機に乗り込む。

今のこの瞬間にも

Aが何か思い出しますように。

そう願う僕と

心のどこかに記憶を塗り替えたいと願う僕が

複雑に絡み合っている。

肌寒い風が�を掠める

降り立った小さな街

タクシーを降りて

Aは寒いねって笑いながら

僕の少し前を歩く。

誰かに案内されたわけでもないのに

辿り着いた小さな街に相応しい小さな教会

Aはじっとその教会を見上げている。

ここは、

大好きな教会だって

いつか僕に見せてくれた写真の中

学生時代のAが楽しそうに

笑っていたその場所だよ。