All of me. (ページ31)

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030:あの日と同じ　(Haruka) ページ31

山道をｸﾞﾙｸﾞﾙ上り続ける。

はい、到着♪って

Aちゃんを振り返ったら、

絶景を前にすっかり目を奪われていた。

私もそうだった。

ここからの景色は

きっと世界一美しいから。

「Aちゃんはね、一人でこの店に来たの」
「あ…」
「その時、Aちゃんが何を思っていたのか分からなかったけど」
「…」
「すごく切ない顔でここからの眺めを見てた」
「…」
「私と事情は違うけど、でも多分近いとこにいたのかも」
「近い…とこ…」
「2人が帰ってくるまでの間、ゆっくりしていて」

まるで覚えているように

最初に座ったﾃｰﾌﾞﾙに座ったAちゃん。

それだけで嬉しかった。

だって彼女はこの国で唯一の

私の妹みたいなそんな存在だから。

「…Aちゃん、本当に記憶ないの？」
「はい、本当に何も覚えてないみたい」
「でも見つかってよかったね…本当に」

ずっと一緒になって心配してくれていたｵｰﾅｰ夫妻も

安心したように彼女を見つめる。

ｼﾞｮｾﾌは慣れたように階段を上がって

以前私が使っていた部屋へ走って行った。

「無理しなくてもいいんじゃない？」
「え…」
「無理に思い出そうとしなくても、また一から始めるつもりで過ごしたらいい」
「一から…」
「ﾁｬﾝﾐﾝもそのぐらいの覚悟決めてると思う」
「…」
「Aちゃんが生きていてくれて、そして帰ってきてくれた」
「…」
「もうね、それだけでいいんだよ」

あの日のAちゃんも

そんな顔で海を眺めていた。

「ﾁｬﾝﾐﾝは、例え一生記憶が戻らなくても」
「…」
「それでもAちゃんを愛すると思うよ」
「でも…私は…」
「Aちゃんの気持ちがどうなるか分からないけど」
「…」
「もしもﾁｬﾝﾐﾝ以外の人を選ぶことがあっても、それでも」

まるで彼女が消えてしまいそうで

思わず一緒に写真を撮ってほしいと言ってしまった。

またここに戻っておいでよ

大丈夫

また会おうね。

そう思いながら。

「Aちゃんはﾁｬﾝﾐﾝの宝物だから」

私も手伝います。

そう言ってくれたAちゃん。

あまり料理が得意でないｱﾅﾀに

こうやって料理を教えていた日の事

いつか思い出してくれるかな？

「ああー私いつもこうなっちゃうんです」
「うん…知ってる」
「え」

慌てるあまりに調味料をちょっぴり入れすぎる

そんな小さな事ですら

懐かしくて、こんなにも嬉しい。