All of me. (ページ24)

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023:始まり　CM ページ24

Aは、明らかに戸惑っている。

福岡の実家に戻した方がいいと思ったけど

出来なかったのは

僕がもう限界だっただけじゃない。

あの日

Aが関係者しか立ち入る事のできない階段室にいたことが

どうしても気になるからだ。

僕の敷地には24時間体制でSPが着く事になった。

そこまで僕に配慮してくれるのは

どんな状況でも仕事をしろという

無言の圧力でもある。

だけど今はとても心強く感じている。

「ここが…私の部屋…」
「そうだよ。寝室を挟んで東側がAの部屋で、西側が僕の部屋」
「…」
「心配しないで、それぞれの部屋にもﾍﾞｯﾄﾞはあるから」
「…すみません」
「ゆっくりしておいで、僕は今日は一日家にいるから」

リビングに下りると

ｿﾕﾝが僕たちのために料理を用意してくれてるところだった。

「ごめんね、ｿﾕﾝ」
「いいえ。私にできる事はこのくらいですから」
「明日から…Aの事よろしくお願いします」
「お任せください!」

このタイミングで日本ツアーが始まるなんて

致し方ない事だけど

僕にとっては歯がゆい現実でもある。

とりあえず週に一度は帰れるようにスケジューリングしてくれたﾏﾈｰｼﾞｬｰに感謝だ。

「Aさん、好き嫌いありますか？」
「牛肉は苦手だから」
「了解です」

ｿﾕﾝも一緒に食べて行ってと言ったのに

今日は2人でゆっくり過ごしてください。

そう言っていそいそと帰ってしまった。

「A、入るよ」
「…はい」
「ごはん、食べよう」

記憶はなくても

Aは自然といつも座っていた

自分の席に座った。

身体の記憶が残っているのだろうか。

僕は嬉しくて顔が綻ぶのを止められない。

「A、聞きたい事全部聞いて」
「…聞きたい事……」
「僕は全然焦ってないからゆっくりでいいけどさ」
「…」
「僕は明日から日本とこっちを行ったり来たりで忙しくなるけど、聞きたい事があったらどんな時でもいいから聞いて」
「…」
「実家に帰りたくなったら、僕のﾂｱｰが落ち着いたら一緒に…」
「どうやって…出逢ったのですか…」
「え…」
「私たちの…始まりが知りたいです」

Aは

真っ直ぐに僕の目を見つめていた。

まるで

初めて出逢った

あの日のように。