011:急展開 CM ページ12
久しぶりに脳が動き始めたみたいだ。
そうだった、僕は頭が良いんだ。
そんな事すら 忘れてた。
すぐにマネージャーに電話を架けた。
あのカフェの近くは
割とお金持ちの家が建ち並ぶ事で有名だ。
同じ業界の人もこっそり家を持っている事も多い。
そして 記憶を辿って
Aがいなくなったあの日
あの時間に空港に居合わせた同業の後輩たちを
ふと 思い出した。
兵役が終わって
Aを福岡へ迎えに行った時も
彼らが居たから
もしかしたら これは運命なのかもしれないと思った。
確信はない。
だけど 賭ける価値は十分にある。
『ikonって…YGの?』
「はい。あの日僕が乗るはずだった飛行機に彼らも乗ってたはずです。もしかしたらAを見てるかもしれない」
『…了解、調べてみるよ』
マネージャーからのメールが来たのは
それから30分後。
あの日 仁川空港の監視カメラに
Aが映っていたらしい。
添付された写真を見て
僕は息を飲んだ。
『彼の名前はジュネ、公にはなっていないが、割と裕福な育ちの子であのカフェの近くに家族が所有する家がある』
画質の悪いそのカメラ画像を見て
思わず嗚咽が漏れそうになった。
Aはどうしてこんなにも不安そうな顔をしてるのだろう。
もしかして…本当に…
ジョセフを抱えて久しぶりに運転をして
ユノヒョンの自宅へ来た。
僕は部屋着にガウンのままだったから
ヌナもヒョンもびっくりしていた。
「Aが…見つかったかもしれない」
2人は慌てて僕を家に入れてくれた。
ジョセフも何か察したのか 落ち着かない様子でうろうろしている。
どれぐらい待っただろう…
1本の電話が鳴った時
僕の心臓は
壊れるほどに鼓動を打ち始める。
『チャンミン落ち着いて聞け』
「…はい」
『彼は予想通りAさんを知っている』
「…そう…ですか」
『大変な事が起っている』
「え…」
『彼女は…記憶喪失らしい』
身体中の血液がストンと足元に落ちた。
眩暈で前が見えない。
遠くでジョセフが吠えている。
「チャンミン!」
ヌナのヒンヤリとした手の感触を最後に
僕は
真っ暗闇の深い深い谷底に落ちて行った。
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作成日時:2017年5月20日 0時