All of me. (ページ13)

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012:弟の背中　YH ページ13

遥がﾄﾞｸﾀｰに電話を架け始めたのを確認して

ﾁｬﾝﾐﾝの手からｽﾏﾎを取り上げた。

『ﾁｬﾝﾐﾝ？』
「ﾏﾈｰｼﾞｬｰ、ごめんﾁｬﾝﾐﾝ倒れた」
『何だって？』
「ﾄﾞｸﾀｰ呼ぶから大丈夫」
『しかし!』
「ずっと眠れてないから、そのせいだ」
『…すぐにそっちに行く』
「その前に彼に代わって」

ｶﾞｻｶﾞｻという音

電話の向こうで明らかに戸惑っている

若い声が聴こえた。

「ｼﾞｭﾈ氏…ですね?」
『…』
「東方神起の…ﾕﾉと言います」
『!!!!!!!!!!!!!!!!』

声にならない驚きまで伝わってきて

俺は咄嗟に耳からｽﾏﾎを少し離した。

「あのー突然ですみません」
『…あ、あ、あ、あ、…お、お疲れ様です!!』
「あはは…ごめんね、そんなに緊張しないで」
『へ、へ、へ、へ、兵役ご苦労様でした!!!』
「い、いやもう本当に、あのさ、あははどうしよう」
『ikonの、あの、あの、あの』
「ｼﾞｭﾈくんだよね」
『は、はいっ!!!!!ｼﾞｭﾈｯです!!』
「ｼﾞｭﾈｯ、なの？」
『ｼﾞｭﾈｯです!』
「あはは、ねぇ小さい［ｯ］いるの？」
『い、要りません!』
「あのさ、A元気なのかな？」
『は、はい…記憶はないですけど』
「詳しい話を聞かせて欲しいんだけど、今日練習何時まで？」
『ｶﾑﾊﾞ前で…多分…夜中です』
「そっか、ごめん。俺たちもうすぐﾂｱｰで韓国を離れるんだ。できればすぐにでも会って話をしたい」
『Aに、いえ、Aさんに聞いて…』
「ううん、ｷﾐと話がしたい」
『俺と…ですか』
「そう、ｷﾐと」

ｶﾑﾊﾞまでの大切な身体なのに

彼は練習後に時間を取ると言ってくれた。

迎えをやるからと伝えて電話を切った。

ﾁｬﾝﾐﾝは

予想通り、過労と寝不足だった。

ゲストルームに寝かせて

ｼﾞｮｾﾌの散歩に出掛けた。

遥のﾚｽﾄﾗﾝは

今日も有名人がお忍びで食事に来ているらしい。

大きな窓を横目でチラ見すると

誰もが知る大物俳優と

新人の女優が密会不倫ﾃﾞｰﾄの真っ最中。

世の中には

色んな人がいるのに

どうしてﾁｬﾝﾐﾝが

こんな想いしなきゃいけないんだろう。

砂浜をﾀﾞｯｼｭするｼﾞｮｾﾌを見ながら

ぼんやりと考えていた。

「起きてたのか…大丈夫か？」
「Aは…」
「今日、お客さんが来るよ」
「お客さん…？」
「もう少し寝ておけ」

すっかり窶れ果てた弟の背中を撫でてやると

涙が零れ落ちそうになってくる。