All of me. (ページ17)

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016:すぐに　CM ページ17

僕の登場で

彼は完全に混乱してしまったみたいだ。

何だか本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「おかわりは？」
「いえ…大丈夫です…ごちそう様でした」
「いいえ～」

遥ﾇﾅが素早くお皿を片付けて

ｼﾞｮｾﾌはすっか眠ってしまった。

これからが本題と言わんばかりに

ｼﾞｭﾈくんが一層背筋を伸ばした。

「あの日、僕は福岡の空港で迷子になってしまいました…」

今まで知る事のなかったあの日。

Aが忽然と姿を消した

あの長い一日が目の前で再現されていく。

「僕は関係者しか入れない階段室のようなところに迷い込んでしまって…とても焦っていました。やっと開きそうな扉を見つけた時、階段に倒れているAさんを見つけました。彼女のﾊﾞｯｸﾞの中から搭乗券とﾊﾟｽﾎﾟｰﾄが飛び出していて自分と同じ時間の飛行機に乗るのだと分りました。最初は放っておこうとも思ったけれど、そんな事できるわけもなくて、必死で彼女を起こしました。幸いｹｶﾞはないようだったから、とにかく急ごうと2人でｷﾞﾘｷﾞﾘで乗り込みました。飛行機の中で、彼女の姿は見えなかったので、おそらくファーストクラスだったんだと思います。でも仁川に着いて、僕はまた彼女を見つけてしまいました」

どうしてAはそんなところにいて

しかも倒れていたのだろう。

記憶を失くすに至る経緯には

何か深い理由がある気がした。

「彼女も僕を見つけて、そして僕にこう言ったんです[何も思い出せない]と。彼女はｽﾏﾎ以外の持ち物を全部持っていたけど、ﾊﾟｽﾎﾟｰﾄの自分の名前を見ても何も思い出せなかった。病院に連れて行ったら、ちょっとしたｼｮｯｸ状態だろうと言われたそうです。記憶はそのうちに戻るかもしれないし…一生戻らないかもしれないと」

体力も生きる気力も失って

頼りないﾎﾞﾛﾎﾞﾛの姿になった自分が許せなかった。

すぐにでも迎えに行きたい。

「事務所の近くに家族が所有する家があるので、そこに住んでもらう事にしました。時々僕もそこに寝泊まりするので、Aさんを住ませる代わりに家事を手伝って貰って、お給料をお支払いしています」

きっと僕の顔を見れば

記憶なんてすぐに蘇るはずだから。

「迎えに行きます」
「今…ですか？」
「はい、すぐに」

せめてツアーが終わるまでは彼に預かってもらおう。

ﾕﾉﾋｮﾝの冷静な判断など

聞こえるはずもなかった。