好きじゃないよ、絶対 (ページ21)

今日:3 hit、昨日:20 hit、合計:23,797 hit

21 ページ21

全く片付いていないロッカーを思う存分漁ったらしい檜山くんはため息をついて少し怒っているようだった。
お目当てのものがなかったんだろうなあ。

そういえば私、自転車登校だから傘なくてもカッパがあれば帰れるんだ。
去年までは歩いて中学校に通っていたからその癖で傘がどうこうと考えていたけれどカッパはずっとロッカーに入っている。
このページが終わったら帰ろう、そう決めて勉強を進めた。

椅子を引く音がしたから檜山くんは多分自分の席について何かをしてるんだと思う。

雨の音は強くなるばかりでもう空も真っ暗だった。
天気予報を見ると止むのは明日の昼らしい。

とりあえず課題を終わらせて帰ろうとしたが檜山くんの絶望の顔を見ると1人だけ帰るのは少し気が引けた。
ロッカーからカッパを取り出して、お母さんがカバンに傘を入れてくれていることを願ってカバンの中を物色する。
あった、けどピンクだ。
小学生が持っていそうなピンク色の可愛い柄の折りたたみ傘。
これを男子高校生に貸すのはおかしいかな。
帰れるだけマシだととらえてくれるかな。
それともカッパを貸すべき？
それだと私は歩いて帰らなければならなくなる。

『檜山くん、傘ないの？』
「ない、から帰れない。」
『私、自転車だから傘使わないし使う？』

あ、顔変わった。
ごめんなさい、ピンクのハートの傘です。

『こんなんでよければ、だけど。』

傘をカバンから覗かせるとまた顔が歪んだ。
背に腹はかえられぬといった表情で嫌でなければ貸してほしいと言われた。

お母さん、多分入れる傘間違えたんだろうな。

校門で別れて少し檜山くんの背中を見送っているとピンクのハートの傘を持った大きな背中が面白く見えた。
本人は恥ずかしそうだったけれど。