好きじゃないよ、絶対 (ページ22)

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「傘ありがとうございました。明日返します。」

と連絡が来た。
律儀な人だと思った。
たくさんの人がいる教室であのラブリーな傘を返されると思うと少し気が引けたが、きっと檜山くんの方が恥ずかしい思いをしたはずだ。

結局返されることなく、放課後。

返すのを忘れているのかか私と話すことが嫌なのが原因か。
きっと後者。

理由は言わずもがな。
浮気相手を疑われたのだから、あまり人前でお互い話さない方がいいだろう。
最近では話題に出されることはなくなったが、ふとした時にクスクスと笑われる感覚があって。
お互い気まずい状態、みたいな。
話しかけるなと言われて以降、かなり話した気がするけど必要以上には関わっていないし、何より彼は私のことが嫌いだ。
昨日のは、困っている人の手助けだ。
友達だからとかそういうのではなく、困っていたから。
檜山くんからのメールは困っていたのを助けてくれてありがとうという意味。
それ以上でもそれ以下でもない。
ただ、それを知らない人の前で関わるといいことがない。
浮気関係にあると勘違いをされているという前提がある上で考えてみれば分かるだろう。
浮気関係にある2人が仲良く話している、こんなに面白い話はないだろう。
年頃の子どもは縺れた恋愛の話が大好物だ。
すぐに食いつき、他人に共有する。
そりゃあ、私たちの居場所もなくなる。
茶化されるのも嫌だ。
この気持ちが檜山くんと一致した。