エピローグ……かな? ページ41
─
「……ったく、おい美琴。ちゃんと説明しろよ?」
「や、また明日くらいに事情聴取されるし……その時に一緒に来て刑事さんから話聞けばぁ?」
欠伸混じりに答えた美琴に兄は大きな溜め息をつく。
「ハア…………お前ってヤツは。
前代未聞だよ。
知らない内に他の世界に介入して主人公とがっつり関わったくせに原作の流れ崩さずに、元の展開に戻してくるなんて」
「…………え?」
ぱちりと切れ長の瞳が開く。
眠気なんて吹っ飛んだ。
「他の世界……って何? ここって違うの?」
「ああ、違うさ。あんな髪型のキャラの濃い奴がアイツらと同じ世界にいて堪るかよ」
「そうかな……?」
首を傾げた美琴は、窓ガラスに反射する、
倉野美琴は、異世界転生者である。
前世で自ら命を絶ち────その辺りは整が言い当てた通りだが、その罰として新しい世界での生を与えられた。
一つだけ彼の違えた読みは、それだった。
そして彼……今は美琴の兄となって、彼女に近しい姿を取っているが。
彼は転生者の動向を監視、及び補助する死神と謂われる存在である。
美琴が望む、若しくは彼が故意に起こさない限り複数の世界が繋がることは有り得ないのだが。
「また別の世界のトリッパーが我が儘言ってなー?
こっちにまで影響が来て接触したんだよ」
「そう……じゃあ、整さんも何か漫画? の主人公なの?」
普通に読みたいな、それ。
「まーな。探したらあるんじゃね?
大事な言葉はご本人からたんと聞いたろ?」
「……そうだね、」
「ま、今日は疲れたろ。着いたら起こすし寝てな」
「ん」
……そう言えば、私の存在はこの世界からは消えてしまうのか。
彼らや彼女らの記憶からも消えてしまうのだろうか。
「…………」
けれど。きっと。
美琴は確信していた。
「…………ありがとね、ツィッセ」
異端の私に関わって紡がれた、最後に彼が贈ってくれたあの言葉も、きっと原作には残らないけど。
だからこそ紛れなく、彼が私だけにくれた言葉だ。
心を小さな幸福感で焚き染めて、眠気に任せて瞼を下ろした。
FIN
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camellia*(プロフ) - ほこりさん» 嬉しすぎるお言葉がぎゅっと詰まってて感動しています……作成当初は自分でもここまで規則正しく更新できるとは思ってませんでした笑 今後も何処かでお会いできた際にはお付き合いいただけたら幸いです。ありがとうございました!!! (9月24日 18時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
ほこり(プロフ) - 完結おめでとうございます!今日で丁度ぴったり1ヶ月なんですね…長いようで短かったです。最初から最後まで全部面白くて…最高でした!またお会いできることを願っています。 (9月24日 17時) (レス) id: 1ad3c07b3d (このIDを非表示/違反報告)
camellia*(プロフ) - kagamikoto08さん» コメントありがとうございます。愛珠さんについてなのですが、ドラマ版では仰る通り妹ですがコミックでは姉となっています。手元にあるのがコミックで、そちらに沿って書いているので今作では姉と書かせていただくことをご了承願いますm(_ _)m (9月16日 13時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
kagamikoto08(プロフ) - 更新待ってました!愛珠ってガロの妹だったと思いますので確認よろしくお願いします! (9月16日 6時) (レス) @page32 id: 7c6ddcdea9 (このIDを非表示/違反報告)
camellia*(プロフ) - あきらさんさん» コメントありがとうございます! 倉野ちゃんは特に思い入れも掘り下げも深いキャラなので嬉しいです……! 早い内に本編で皆様のお目にかかれるよう頑張ります!! (9月10日 0時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:camellia* | 作成日時:2023年8月24日 18時