彼女だけの謎解き。 ページ40
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「美琴さんは受けた分を同じだけ、大事にされた分をしてくれた人にも返して、全く別の人にも与えてあげられる人なので」
与えられなかった救いの手ですら差し出せるのだから。
「それをすれば少しずつ周りに人は増えていくはずです。
人を見極める力もあると思うので、信頼し合える、一人一人と深く話せる本当のお友達が」
美琴の、熱の滲んだ目尻が雪に冷やされていく。
「……できる、かな?」
「美琴さん次第です。……泣いてるんですか?」
洟を啜った微かな音に聞き返した。
「泣いちゃダメ?」
「僕が泣かせたみたいなので、ちょっと」
「だって、貴方のせいじゃない」
貴方のせいだ。
「──────。
整さんみたいな大人に会えてたら良かったな。
そうしたら、何かが変わってたかもしれない」
髪をぐしゃりと崩して、空を仰ぐ。
「はい。会えてたら、気づいたと思います。
小学校の先生になるのが夢なんです」
「そっか……」
教師じゃなくて、“先生”か。
うん、ぴったりだと思う。
「私子どもが出来たら、整さんが担任になってほしいな」
「結婚する予定あるんですか?」
「どうかなー、シングルマザーの方が気楽かも」
冗談に聞こえないんで止めてください、と彼が言うと、眩しい光が近づいてきた。
「あ、兄さんだ」
手を振ると、パッパッと応えるクラクション。
それが停まり、二十代前半くらいの男性が降りてきた。
「美琴! バスジャックって何だよ!?」
「事情はまた詳しく説明するから、帰ろう。
……この人は、一緒に巻き込まれてた久能さん。今まで付き添ってくれてたの」
「そうなのか。どうも、妹がお世話になりました。ありがとうございます」
深々と下げられた頭に、久能も同じ動作をした。
「ありがとうね、整さん」
また、なんて言わないし、況してや連絡先を渡したりなんかしない。
人生は劇的ではない。
一度きりの出会いと別れの方が溢れている。
でも、ただ、
別れは笑顔で。
今日一番の、そして最後の。
年相応の可愛らしい笑みを浮かべた美琴は、ひらひらと手を振って車に乗り込んだ。
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camellia*(プロフ) - ほこりさん» 嬉しすぎるお言葉がぎゅっと詰まってて感動しています……作成当初は自分でもここまで規則正しく更新できるとは思ってませんでした笑 今後も何処かでお会いできた際にはお付き合いいただけたら幸いです。ありがとうございました!!! (9月24日 18時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
ほこり(プロフ) - 完結おめでとうございます!今日で丁度ぴったり1ヶ月なんですね…長いようで短かったです。最初から最後まで全部面白くて…最高でした!またお会いできることを願っています。 (9月24日 17時) (レス) id: 1ad3c07b3d (このIDを非表示/違反報告)
camellia*(プロフ) - kagamikoto08さん» コメントありがとうございます。愛珠さんについてなのですが、ドラマ版では仰る通り妹ですがコミックでは姉となっています。手元にあるのがコミックで、そちらに沿って書いているので今作では姉と書かせていただくことをご了承願いますm(_ _)m (9月16日 13時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
kagamikoto08(プロフ) - 更新待ってました!愛珠ってガロの妹だったと思いますので確認よろしくお願いします! (9月16日 6時) (レス) @page32 id: 7c6ddcdea9 (このIDを非表示/違反報告)
camellia*(プロフ) - あきらさんさん» コメントありがとうございます! 倉野ちゃんは特に思い入れも掘り下げも深いキャラなので嬉しいです……! 早い内に本編で皆様のお目にかかれるよう頑張ります!! (9月10日 0時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:camellia* | 作成日時:2023年8月24日 18時