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今まで静かに聞いていた兄の変わりように、思わず僕は口をつぐんだ
逆に兄は怒りをぶつけるように声を出す
「お前に何ができるって言うんだよ。米も1人で炊けないような奴が剣士になる?人を助ける?馬鹿も休み休み言えよ!!本当にお前は父さんと母さん、それにAとそっくりだな!!
楽観的すぎるんだよ。どういう頭してるんだ。具合が悪いのを言わないで働いて体を壊した母さんも、嵐の中薬草なんか採りに行った父さんも!あんなに止めたのに…!母さんにも休んでって何度も言ったのに!!
人を助けるなんてことはな、選ばれた人間にしかできないんだ。先祖が剣士だったからって、子供の俺たちに何ができる?教えてやろうか?俺たちにできること。犬死にと無駄死にだよ。父さんと母さんの子供だからな。
結局はあの女に利用されるだけだ。何か企んでるに決まってる。
この話はこれで終わりだ。いいな!さっさと晩飯の支度をしろ!!」
「………」
僕たちは口を利かなくなった
いつも仲裁してくれるAも、段々来なくなってきていた影響もあったと思う
ずっと家へ通ってくれるあまね様に、兄が水を浴びせかけた時だけ1度喧嘩をしたきり
その時も、運悪く水を浴びせかけた時にAがやって来てあまね様の味方をしたせいか、兄はAにも「もう来るな」と言い放ってしまった
Aは複雑そうな顔をしていたけど、あまね様と一緒に無言で帰ったきり家に来なくなった
Aが来ないまま夏になった
その年の夏は暑くて、僕たちはずっと苛々してた
夜も暑くて蝉も鳴いてて
戸を開けて寝ていたら鬼が入ってきた
鬼は兄さんの腕を瞬時に斬る
「うるせぇうるせぇ、騒ぐな。どうせお前らみたいな貧乏な木こりは何の役にも立たねぇだろ。いてもいなくても変わんないようなつまんねぇ命なんだからよ」
目の前が真っ赤になった
生まれてから1度も感じたことのない、腹の底から吹き零れるような激しい怒りだった
その後のことは本当に思い出せない
途轍もない咆哮が、まさか自分の喉から、口から発せられていると思わなかった
───気づくと鬼は死にかけていた
だけど頭が潰れても死ねないらしく、苦しんでた
間もなく朝日が昇り、鬼は塵になって消えた
心底どうでもよかった
早く有一郎の所へ行きたかったのに、突然体が鉛みたいに重くなってて
目の前にある家まで随分時間がかかってしまった
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処刑人 - おもちろかったです!!めちゃくちゃ笑いました。 (2022年5月5日 21時) (レス) id: 37fa50b5c3 (このIDを非表示/違反報告)
Yona🍊 - 続きが楽しみですぅー!!!面白くてwwこれからも頑張ってください! (2022年4月28日 20時) (レス) @page49 id: ca15e254da (このIDを非表示/違反報告)
くろニャンコ - いつも作品読ませてもらっています。すごく面白くて楽しみにしています笑これからも頑張ってください‼ (2022年4月8日 2時) (レス) id: a24d5541bc (このIDを非表示/違反報告)
カナリアドール・デミア・スカーレット(奏)@推し大好き0701 - 好きです!(突然の告白)この作品!ものすごく面白いです!更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2022年1月4日 20時) (レス) @page49 id: 605309b64c (このIDを非表示/違反報告)
おもち食べたい(プロフ) - 私の気分はさくらんぼさん» そのようなコメントを頂けてとても嬉しいです!ありがとうございます! (2021年9月21日 22時) (レス) id: 20bccc651c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おもち食べたい | 作成日時:2021年8月17日 14時