〃 ページ12
「それにしてもびっくりしたよ。いきなりレオみたいなこと言うんだから」
『あはは……、それは申し訳ないです。あさぬ〜先輩』
「もう、本当にレオが憑依したのかと思ったよ。『
『……すみません。でも、先輩が部屋を貸してくれて助かりました。おかげで、担当さんに笑顔で会いに行けそうです』
「そんなに溜めてたの？」
『まあ、ここ数年はまったく降りてこなくて……』
言われてみれば、と浅沼は首を縦に振る。どこの書店に行っても、今はもうほとんどカミヤマコトの作品を目にすることはない。あったとしてもそれは過去の作品であって、最新のものは一切置かれていないのだ
「まあ、ひと段落ついたみたいだし、ゆっくりしようか」
『はい、ご心配おかけしました』
「いえいえ」
カミヤマコトは少し冷めてしまったホットミルクを手に取った。猫舌なカレは、それに息を吹きかけ、少しずつ喉に流し込んでいく。そんな幸せそうな顔をしてぼーっとしているカレを見て、浅沼は思う、毎日が充実しすぎている、と。それもそうであろう。誰もが想像し、夢を思い描くように、人気作家と共に暮らしているのだから。だがしかし、ここで誤解してはならないことは、浅沼が同居しているのが人気作家『カミヤマコト』であって、カミヤマコトではないということ。『カミヤマコト』は人気作家である前に、一人の大学院生であり、性別不明の両声優『
『それはそうと、あさぬ〜先輩は今まで何をやっていたんですか？』
「え、俺？俺は明日の収録の台本を読んでたけど……」
『もしかして、あんスタのですか？』
「そうだけど……」
それがどうした？と首を傾げ、不思議そうな顔をする浅沼に対し、Aはその場で座り直し、浅沼の真正面で頭を下げた
『あさぬ〜先輩さえよければ、通しで付き合ってくれませんか？』
「付き合うって、読み合わせに？」
『はい！！』
「俺は別に構わないけど、疲れてるんじゃないの？大丈夫？？」
『平気です！あれは趣味みたいなもんですから！』
「……そう？じゃあ、疲れたり、眠くなったりしたらちゃんと言うんだよ？」
『はい、もちろんです！！』
どこから出してんだと言わんばかりの元気の良さに驚きつつも、浅沼は台本を手に取り、Aと向かい合った
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