【オリジナル】かげぼうし【完結】

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影法師はまた歩き始めた。


床に倒れている人は
ほとんど助からない人たちだ。


病院もほぼ全滅で
機能も全くしていない。


というか
医者と看護師が１人もいないのだ。



どうやら生きている人は
もういやしないだろう。



そんな時
誰かの声が聞こえた。


「そこの……お前さん」


白髪まじりのおばさんだった。


どうやら手を汚しているようだ。


けれど
地下の片隅に隠れていたお陰で
助かったようだ。


ずっと何も食べていないようで
お腹もやせ細り
腰からは
くっきりと骨がみえる。


「助けておくれ」


「…………」



しかし
影法師は何も喋らずに
また歩き出した。


しかし
そのおばさんは彼女のスカートをつかみ
泣き声を上げた。


「助けておくれよ。

喋れないのかい？」


影法師はコクリと頷き
おばさんの手を振りほどいた。


「じゃあ、ここに文字を書いてくれないかい？」


ペンとノートを渡してきたが
目もくれずに
歩き出した。


「お前さーん、酷いじゃないか」


おばさんは
追いかけたが
やせ細ったせいで
ほとんど歩かなかった。


影法師はその姿を見て
戻ってきた。


「……タ……ス……ケ……タ……イ」



「お前さん、話せるのかい？

助けたいなら

助けてくれないかい？」



しかし
影法師は首を振った。


「……タ……ス……ケ……ラ……レ……ナ……」


その返事に怒りを感じたのか
そのおばさんは発狂して
どこかに行ってしまった。

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