13 ページ14
部屋に入ると首領がにこやかな顔をして待っていた。
森「やあ、Aくん。座り給え。中原くんも。」
中原「失礼致します。」
「失礼致します…」
森「全て、見たかい？拷問訓練の一通りを終えたみたいだけど。」
「受けるのは全然平気です。だけど見るのは好きじゃないです。」
森「そうみたいだねえ。太宰くんが言っていたよ。」
にこやかな笑顔を崩さず、森はそう答えた。
森「唯ね、マフィアってこういうのだらけなんだよ。慣れてね」
「…首領。」
森「何だい？」
「私を、スカウトしたってことは殺しをさせたいからですよね。でも今の結果からして無理そうって思ってますよね。何故切り捨てないのですか。」
森の目の前の彼女はそう告げた。
驚く程、色の無い瞳で。
森「君は、必要とされたい。そうだろう？」
「…良く、ご存知で…」
森「君が必要だよ。ねえ、中原くん」
中原「はい。」
ここまで、Aにはっきり必要だと言い放つ人はいなかった。
彼女の経歴は知る人ぞ知る。
一年前にあった人身売買事件における異能力暴走事件の張本人である。異能力暴走こそ伏せられたが、実の父と母から売られそうになったという事実は彼女の精神を不安定にさせるのに申し分ない圧だった。
「…首領、私は実の父と母に必要ないからって言われたことがあるんです。生みの親です。そんな私が要りますか。」
森「少なくとも、君の御両親よりは必要としているよ。」
そう声をかけた森の顔は、ポートマフィアの首領とは思えないほど優しい笑顔だった。
「…頑張ります。」
言葉数少なく答えたAは涙を流していた。
森「じゃあ頑張って貰おうかな。A"ちゃん"。」
「はい。」
中原「…行くぞ。A。失礼致します首領。」
2人は首領室を去った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：テオ | 作成日時：2017年7月13日 15時
