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動き出したのは三人同時だった。一番に扉に手をかけたのは庵里。残る二人は一歩後ろで構える。走った勢いのままに勢いよく扉を開け放つ。建て付けの悪くなっていたその扉は、壊れながらもその場から消えた。

教室は理科室。人間の姿はない。呪霊の姿も見当たらない。代わりに窓際には人体模型が三体。そして机の上には燃えているアルコールランプ。まるでさっきまで誰かがいたかのようだ。庵里の目が油断なく室内を見る。片手には既に糸。人体模型、アルコールランプ、棚の中のビーカー、黒板、どれから警戒すべきだろうか。そろそろと足を進めてみる。全身が室内に入った。何も起きない。いや、小さな音がする。どこから、と考える間もなく本能で体が動いた。上だ。
瞬時に自分が壊した扉を通ってきた向きのままに戻る。廊下に戻った瞬間、先程まで自分が立っていた場所に天井の蛍光灯が落ちた。それが割れる音と同時に辺りに蛍光灯の欠片が飛び散る。
さらにそれと同時に三人背中合わせに周囲を警戒する。何も出てこない。物音一つ聞こえない。自分達の呼吸音以外に音はない。呪霊の気配もないのを確認して、庵里は口を開いた。

『……今の、老朽化じゃないよね』

問いかけられた二人は頷いた。
予想外に面倒な任務に首を突っ込まされているようだ。一瞬の物音と、一瞬のポルターガイスト的現象。非常にめんどくさい。

「校舎と校舎の間が一番怪しくね?」
『間にあるのは中庭、渡り廊下、プール。この中ならどこ?』
「渡り廊下。校地内の中央って多分そこだろ」
『じゃあこっちだ』

五条の言うままに案内するだけのナビと化した庵里は、これが終わったら篤樹を殴ろうと決意した。貴重な休暇を返してほしい。

「そういえば、どうして君はここの内部まで詳しいんだい?」

歩きながら夏油が唐突に口を開いた。

『一回だけここに来たことあるし、入り口に案内図あったから。見たら覚えるよ』
「来たことあるならそん時に祓っとけよ」
『来たの高専入る前だし……あ、そこ曲がったらすぐ渡り廊下』

そっと様子を伺うと、渡り廊下の真ん中に巨大な呪霊が鎮座しているのが見えた。そして庵里とそいつの目が合う。途端に渡り廊下へと続く扉が吹き飛んだ。

『……きっしょ……後は任せるね頑張れ』

流れるように二人に戦闘を押し付ける。私じゃ勝てませんと口に出さずとも伝わったようだ。
最強の二人ならまあ大丈夫だろ、と庵里は被害のないところまで走った。それを卑怯とは言わせない。

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作者名:籠目 | 作成日時:2021年2月8日 23時

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