Sixty-four ページ17
にこりと微笑んだバッキンガム立ち上がる。
できあがりかけている連中の介抱に行くため御前失礼と一言彼女に行ったのち踵を返したのだが、何かが行く手を遮る。
首だけ後ろを振り返ると、彼女がバッキンガムのペリースを握って引き留めているらしい。
「いがかされたかなレディ」
「……」
むっとした表情でバッキンガムを見上げる彼女に、からからと笑ったのちに隣失礼と一言言ってから彼女の左隣に腰を下ろしたバッキンガム。
どうやら彼女は、一人では寂しいようだ。
そのあとは特に会話らしい会話をすることなく、ただただ隣合って座っただけ。
ぼんやりと楽しげに日本酒飲む村人達や、生まれて初めての満腹感を味わい微睡む少年少女達、あと今だに悟能がどっちかの争いをしているアーチャー二人の様子を、暖かな目で見守っていた。
「？」
こつり、と左肩に重みが加わる。
見れば青紫色の髪色が目に入った。
スースーと小さく寝息が聞こえる辺り、酔って眠ってしまったのだろうか。
しかし、随分とまぁ可愛らしいことをしてくれるものだ。
からからと笑いそうになるところを耐えて、優しく笑んだ。
彼女が誰かは、最初から気付いていたのだがあえて知らない呈で会話を続けていたバッキンガム。
何故彼が知らない呈でいたのか簡単。
珍しい一面を見たいがため。
あと普段は砂塵避けの仮面にて隠された素顔を今回になってようやく目にできたため、とも追記しておこう。
ここにきて彼女の本当の信用を寄せられたことに嬉しくも思いつつ、少しくすぐったい気持ちもある。
生前では家族以外では本当の信用も信頼もない、欲望と謀略が渦巻く騙し合いがある意味もう一つの家族といってもいい。
それほどまでにバッキンガムの生前は信用も信頼もない世界だった。
「随分と百貌から気を許されているようですな、公爵殿」
すっと現れた砂塵避けの仮面の一人にからからと笑って冗談の一つでも返してやりたいところだが。
今は左肩で淑女が眠っているために右手の人差し指を口元に持っていき、にこりと微笑む。
「……。私と藤丸殿、マシュ殿とで周囲の野獣共を追い払って参ります」
行ってらっしゃいと言わんばかりに右手を振り、ハサンと立香とマシュを送り出す。
どことなく恥ずかしそうにバッキンガムと彼女を見て、頬を赤らめる立香とマシュにもニコニコと笑みを保ちながら右手を振るう。
その瞳は一瞬だけ青くなり、しかし直ぐに緑へと戻っていた。
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翔べないペンギン(プロフ) - 爆死なうさん» コメントありがとうございます。そういただけますと大変嬉しいです。拝読いただきありがとうございました。 (2021年2月16日 8時) (
レス) id: 968bf19702 (このIDを非表示/違反報告)
爆死なう - 素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月15日 0時) (レス) id: baaad41788 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2020年12月6日 18時
