第６８話 その幹部、歩く。 ページ21
久し振りに床に下ろした足。久しぶりに履いた靴。感覚のない脚が、引っ張り上げるように伸びて、目線が一気に高くなる。それでもふらついて前にも後ろにも倒れなかったのは、目の前に居るAさんの影が身体と両腕にまで巻き付いて補強してくれていたかららしい。着てる服が黒いから分からなかったけど、すげぇ。
「立てた」
「ご主人様、この状態のまま、一歩前に動かせますでしょうか。両足で確実に影を踏んでいただきます」
「一歩、まえ」
ずり、と脚を引っ張って、もう片方も引っ張って、Aさんの影に両足が入った。あ、こんな近いのは初めてかもしれない。思ったより背は高くなくて、上から見下ろすのが初めてで、なんか変な感じ。
「それではご主人様。離れないでくださいませ」
足元にさっきより濃い影ができる。声を上げる間もなく、二人揃って落ちる。転ぶことも尻もちつくこともなかったのは、補強されたままだから？真っ暗だけど不思議と怖くないのは、目の前に立っているAさんのお蔭かもしれない。あ、離れちゃダメなんだっけ。
「ねぇ、その……服、つまんで良い？」
「どうぞ」
加減ができるようになったとは言え、掴むとか握るなんてレベルが高い。ましてや誠実なメイドに自分から接触なんて、あいつらに知られたらヤバい。茶化すどころか命の危機だ。
摘まんだメイド服の袖は、思ったより掴めて、腕が細いのかな、なんて考えてた。
「もうすぐかと思われます。陛下のお部屋の、ソファの陰に繋がっておりますので」
「うん」
実際に廊下を通ると時間はかかるけど、陰の中を通ると瞬く間だった。一か所だけ上が明るい所が見えて、あそこかな、って考えてみる。
「あ！来た来た！」
「陛下。この度は自室を貸していただき、誠にありがとうございます」
「良いって良いって！しゃけも、顔見るの久し振りだし」
ソファとベッドのどちらが良いか聞かれて、ソファを希望する。仲間とは言えベッドに乗るのはなんか違う気がした。
今はソファの後ろに居るから、また一歩ずつ足を引っ張って移動して、ソファに座る。
「ご主人様、影を離しますね」
「うん。久し振りに歩けて楽しかったよ」
一歩Aさんが離れると、影が離れたらしくどっと身体が重くなる。ずっと動いてなかった反動が大きすぎた。
「それでは、失礼いたします」
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紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ@端末垢 - にゃーちゃんさん» 初コメありがとうございます！夢主ネロちゃんが刺さってくださって嬉しいです！もうすぐ続編に進みますが、完結までお付き合いくださいませ〜〜！ (11月30日 14時) (
レス) id: 15e99861f0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します！めためたに好き過ぎました…!!面白過ぎて、一気読みしてしまうくらいに好きです！夢主ちゃんがどストライク過ぎた…更新頑張って下さい。楽しみにしてます！ (11月29日 22時) (レス) @page44 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
Ray(プロフ) - 紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ@端末垢さん» ええええっ？！この場をお借りして､読んで頂いてありがとうございます…！これからも更新お待ちしてます…！ (9月28日 23時) (レス) id: d88e598144 (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ@端末垢 - Rayさん» コメントありがとうございます！ひょぇ、まさかの拝読してる作品の作者様がコメントくださるとは……!!!!有能だけどマイペースなネロちゃんをよろしくお願いします！ (9月28日 21時) (レス) id: 15e99861f0 (このIDを非表示/違反報告)
Ray(プロフ) - 有能メイドが好きなので何度も読み返してます。更新頑張って下さい…！ (9月28日 1時) (レス) id: d88e598144 (このIDを非表示/違反報告)
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