《B-PROJECT》みじかいゆめ4

花が咲く場所_2 ページ48

別に、この会話が嫌なわけじゃないのに。
弥勒くんも明謙の幼馴染ということで昔から知ってたし、話を聞いている分には面白い。なかなかキャラの濃い後輩だなあと思っていたらまさか明謙と一緒にアイドルになるなんて思わなかった、とまたポスターに目をやってわたしは思う。それと、金髪と黒髪の双子。わたしは会ったことないけど、明謙から話をよく聞いて、こちらもまた随分個性的な双子なんだなあというイメージを抱いていた。
彼らの毎日はいろいろトラブルもあったりするけど、聞いていてすごく面白い。何より明謙が楽しそうに話してくれるのが、わたしにとって何より嬉しいことなんだ。
…なのに。相槌をうちながら、やっぱり胸の中に巣食うもやもやに気分がすっきり晴れない。

「ごちそうさまでした！」
「お粗末様でした」

ぱん、と手を合わせて「美味しかった！！」と笑顔を向けてくれる明謙にわたしも笑みを返して、机のお皿を重ねる。

「わ、僕の分まで」
「久しぶりの我が家だし？ゆっくりしてなよ」
「なんかごめんね、ありがとう。ごはんも作ってもらったのに」
「いえいえ」

よいしょ、と重ねたお皿を持って流しへ向かう。一人暮らしの台所だ、そんなに大きくないから二人分のお皿を置いていっぱいいっぱいになる。水で軽く汚れを洗い流しながら、…やっぱりもやもやが残ってるなあ、とわたしはこっそりため息をつく。
何なんだろう、なんて誤魔化そうとしたって無駄だった。

「ばか」

自分に向かって呟いた言葉は明謙にまで聞こえてはいないだろう。
キラキンに嫉妬なんて、わたし、本当ばかだなあ。
久しぶりに会えて、嬉しかったんだ。来ることわかってたのに、ドアを開けた瞬間見えたオレンジの髪色に、ぴったり同じ高さのきらきらした瞳にどきどきして、一緒にいられることが嬉しくってたまらなかったんだ。

だから、本当は。もっとわたしの話を、聞いてほしかったんだ。
明謙の話を聞くのは楽しいけど、キラキンの話は聞いてて面白いけど、でも。
泡のついたスポンジで食器を擦りながら、思う。
大学の授業の話とか、サークルの話とか、バイトの話とか。わたしの側の世界の話を、いっぱい聞いてもらいたかったんだ。

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