りんごあめの味がする_4 ページ46
そんな声にならない願いが通じたのか、ふ、と軽く息をついて、悠太の唇は少しだけ離れていった。石段に置いた手を重ねて、悠太はわたしを覗き込むような体勢で、にいっと柔らかく笑う。それは不思議な笑みだった。ちょっとだけ細めた瞳は、だけどどこか悪戯っぽくて、ちらりと覗いた八重歯は、何だか色っぽくって、
「あまいね」
「ゆ、うた」
「あまいのは、何でかな?」
そんな距離で喋るものだから、吐息が微かに鼻をくすぐった。ああもう、おかしくなりそうだ。ばくばくと煩い心臓が思考回路を鈍らせる。
くん、と香った甘い匂いは、わたしの口の中にまだ広がるそれとよく似ていた。
「……りんごあめ?」
「ふふ、そーかも。でも違うよ」
あのね、囁くような悠太の声と共に、大きな手がわたしのほっぺを包みこむ。こつりと、おでこ同士が触れる音がした。
悠太の瞳が、わたしを絡め取っていく。
「……あまいのは、好きだから、だよ」
「……っ」
「Aちゃんは、あまかった?」
じん、と触れたくちびるが、熱く疼く。
「……とびきり」
「ふふ」
嬉しそうに笑った悠太は優しく頬を撫で、
「僕、まだ甘いの、足りないよ。だから……」
それ以上聞かなくたって、悠太がどうしたいのかはもうわかっていた。それが答えになるかわからないけど――このどきどきは、どうしたって嫌なものじゃない、拒否なんて、できない、したくない。
だからわたしは悠太の服の裾をきゅっと掴んで、少しだけ、引き寄せたんだ。
ねえ、これが恋ってやつなのかな。
他の人がどうなのかなんて、わたしにはわからないけど、――わたしの恋はどうやら、
りんごあめの味がする
それはとびきり甘くって、きっといつまでも忘れることなんてできない、夢みたいな夏の夜。
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続くか!?夏祭りで五題より「りんごあめの味がする」でした。
タイトルから思いついたんですけど、あしゅ〜に甘々〜〜にしてもらいたかったんです、個人的にはもうどっぷり甘々です、満足です。
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keizi-yuki(プロフ) - まほしさん» 面白いです!!まほしさんにお聞きしたいことがあるのですがお聞きしてもよろしいですか?僕も今Bプロの小説を書いているのですがお互いの呼び方がわからないので教えてもらうことってできますか? (2018年6月2日 16時) (レス) id: d1d4e10695 (このIDを非表示/違反報告)
Alice@Shu.Ryuji(プロフ) - まほしさん» ご解答ありがとうございます〜。楽しみにしてます!! (2017年8月4日 21時) (携帯から) (レス) id: a0d3cca6c5 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - Alice@Shu.Ryujiさん» リクエストは特に募集はしていませんが、書けたら書くし思いつかなければ書けない…という感じです。言っていただいたのにすみません(汗)ただ、次は和南くん夢アップする予定なので、書きあがったら読んでいただけたら嬉しいです^^ (2017年8月4日 12時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - Alice@Shu.Ryujiさん» こんにちは。いつも読んでいただき、ありがとうございます!これからもマイペースに頑張りますので、また読んでやってくださいませ。 (2017年8月4日 12時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
Alice@Shu.Ryuji(プロフ) - 個人的なお願いですが、竜ちゃんと和南お願いしたいです。リク受付なさってなければごめんなさぃ(/_・、) (2017年8月3日 23時) (携帯から) (レス) id: a0d3cca6c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まほし | 作成日時:2017年6月9日 21時