わたしの王子様_4 ページ35
「……夢、で」
「のんきに寝てたもんな」
「う。その、夢で。……剛士によく似た王子様みたいな人と、踊ってて」
「……は?」
あ、ほらそういう顔する。何言ってんだオマエ、みたいな表情に、ああ適当なこと言って誤魔化しておけばよかったと今さらながらに後悔するももう遅い。だから慌てて弁解じみた言葉を口にする。
「や、別に剛士に王子様っぽさを求めてるわけじゃなくて。そういうのは北門くんとか増長くんとかで十分だし。だからわたしも何でそんな夢見たのかわかんなくって」
「だから、喧嘩売ってんのかてめえ」
「わー、違う違う!」
いや、なんでそうなるの?今度は剛士が苛立った理由がよくわからなかったけど、怒ってるみたいだからとりあえず「ごめんって!」と謝っておく。するとさらに眉が不機嫌そうに顰められて、
「馬鹿にすんじゃねえ」
「へっ!?」
ぶんぶんと顔の前で振っていた右手をぎゅうと掴まれ、剛士の方へと引かれる。あまりに強い力だったから立ち上がらざるを得なくて、椅子がガタリと音を立てた。ちょっと、何、流石に文句の言葉も出そうになって剛士の顔を見上げると、
「………っ」
夢で見た王子様みたいな剛士とほとんど同じ角度、同じ近さ。となれば、嫌でも夢で感じたどきどきが蘇ってきてしまい、わたしは何も言えなくなる。至近距離でそんなわたしの顔を眺めた剛士はくくっと低く喉を鳴らして薄く笑みを浮かべる。
本棚に囲まれた、いつも打ち合わせに使っている小部屋。無機質な天井に貼りついているのはただの蛍光灯のはず、なのに。
「別に王子だとか北門だとか、どうだっていいけど」
赤い瞳に芯の強さを宿らせてそう言う剛士から、目を逸らせない。
いつも通りの黒いTシャツに、シルバーのネックレス。それなのに白いタキシードに身を包んだ彼の姿にぴたりと重なって見えたその瞬間、ワルツの穏やかな三拍子がたゆたうあの大広間にいるような、そんな錯覚すら起こしてしまう。
繋いだのとは反対の手がわたしの腰を強く抱き、腰骨同士がぴたりと密着する。ああ、まるで同じだ。全く同じ格好、だけど服が擦れる感触や繋いだ手と手の汗ばみは、ずっとずっと今の方がリアルで、だから余計に、どきどきしてしまっている。
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keizi-yuki(プロフ) - まほしさん» 面白いです!!まほしさんにお聞きしたいことがあるのですがお聞きしてもよろしいですか?僕も今Bプロの小説を書いているのですがお互いの呼び方がわからないので教えてもらうことってできますか? (2018年6月2日 16時) (レス) id: d1d4e10695 (このIDを非表示/違反報告)
Alice@Shu.Ryuji(プロフ) - まほしさん» ご解答ありがとうございます〜。楽しみにしてます!! (2017年8月4日 21時) (携帯から) (レス) id: a0d3cca6c5 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - Alice@Shu.Ryujiさん» リクエストは特に募集はしていませんが、書けたら書くし思いつかなければ書けない…という感じです。言っていただいたのにすみません(汗)ただ、次は和南くん夢アップする予定なので、書きあがったら読んでいただけたら嬉しいです^^ (2017年8月4日 12時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - Alice@Shu.Ryujiさん» こんにちは。いつも読んでいただき、ありがとうございます!これからもマイペースに頑張りますので、また読んでやってくださいませ。 (2017年8月4日 12時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
Alice@Shu.Ryuji(プロフ) - 個人的なお願いですが、竜ちゃんと和南お願いしたいです。リク受付なさってなければごめんなさぃ(/_・、) (2017年8月3日 23時) (携帯から) (レス) id: a0d3cca6c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まほし | 作成日時:2017年6月9日 21時