検索窓
今日:23 hit、昨日:3 hit、合計:82,011 hit

わたしの王子様_2 ページ33

「A」

少し屈んだ彼の唇が耳元でわたしの名を囁き、ちゅ、と小さな音を響かせる。たったそれだけの動作なのに、それは瞬く間に全身へと熱を届け、甘い痺れが心地よくて、手足の自由も効かない錯覚に陥ってしまう。
だけどそんな意識に反して、滑るように足は動き出した。自然、わたしの左手は彼の肩へと乗っている。ダンスが始まったことに少しだけ戸惑いを見せたわたしに、それでいいとでも言うように小さく笑みを浮かべてみせた。
穏やかなワルツの調べが広間を満たし、空気ごと揺らめかせているみたいだ。見えないはずのそれがまるで波のようにうねっているのを肌で感じる。彼のリードに任せたゆるやかな回転はひらりとドレスをはためかせ、それを見たからか、彼の嬉しそうな吐息がすぐ近くに聴こえた。

「A」

低く、それでいて甘いその声で名を呼ばれるたびに、心地いい痺れが脳まで達していく。ほとんど脳みそが溶けてしまっているんじゃないかなんて場違いな心配をしなければならないほどだ。

「A…」

いつの間にか音楽が止んでいた。彼の肩越しに見えていた他の人たちも、今ばかりは視界に入らない。豪奢なシャンデリアも、壁にかけられた高そうな絵画も、何も見えない。ただただ、近づいてくる彼のことしか、目に入らない。
そう、そうだよね。
王子様とのラストは、キスシーンだと相場が決まっているものだ。
だからわたしは、そっと目を閉じたんだ。

わたしの王子様_3→←わたしの王子様_1(剛士)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (36 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
91人がお気に入り
設定タグ:B-project , 夢小説 , 短編集   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

keizi-yuki(プロフ) - まほしさん» 面白いです!!まほしさんにお聞きしたいことがあるのですがお聞きしてもよろしいですか?僕も今Bプロの小説を書いているのですがお互いの呼び方がわからないので教えてもらうことってできますか? (2018年6月2日 16時) (レス) id: d1d4e10695 (このIDを非表示/違反報告)
Alice@Shu.Ryuji(プロフ) - まほしさん» ご解答ありがとうございます〜。楽しみにしてます!! (2017年8月4日 21時) (携帯から) (レス) id: a0d3cca6c5 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - Alice@Shu.Ryujiさん» リクエストは特に募集はしていませんが、書けたら書くし思いつかなければ書けない…という感じです。言っていただいたのにすみません(汗)ただ、次は和南くん夢アップする予定なので、書きあがったら読んでいただけたら嬉しいです^^ (2017年8月4日 12時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - Alice@Shu.Ryujiさん» こんにちは。いつも読んでいただき、ありがとうございます!これからもマイペースに頑張りますので、また読んでやってくださいませ。 (2017年8月4日 12時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
Alice@Shu.Ryuji(プロフ) - 個人的なお願いですが、竜ちゃんと和南お願いしたいです。リク受付なさってなければごめんなさぃ(/_・、) (2017年8月3日 23時) (携帯から) (レス) id: a0d3cca6c5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まほし | 作成日時:2017年6月9日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。