《B-PROJECT》みじかいゆめ4

『興味深い』は程遠い_2 ページ2

各方面から集められたとはいっても、アイドル界隈から呼ばれたのは俺一人。演技を本業としない俺に対していい顔をしない人も多いのだと、経験からわかっていた。
ま、彼らの視線に含まれてるのはそれだけじゃないだろうけど。相変わらず楽しそうに笑って話を続ける女の子たちを見て、小さく息を吐く。別に俺が頼んで集まってきてもらってるわけじゃないんだけどな。だから恨まれたってお門違いってものだ。

…ん、再び前髪に指を伸ばし、鏡に目を向けると、先ほど移動した入口から高校生のあの子が戻ってきたのが見えた。丁度葛城も顔を上げ、鏡を通して視線が交錯する。

その瞬間、きゅ、と眉がしかめられ、鋭い視線が俺を射抜いた。踵を返して反対方向へと向かい、ポケットに入れていた台本を取出し開く。もう俺を見てなんかいない。
随分嫌われたものだな、と肩をすくめた。別に構いやしないけれど、と胸の内で呟く。好意には好意を返す。敵意には反応せず、通り過ぎる。それが処世術という奴だ。

「ねえ愛染くん」
「ん？」

ふと名前を呼ばれて意識を彼女たちに向ければ、また話題が変わっていたのかファッション雑誌を見せられて、「愛染くんはどれが好み？」と聞かれる。

「そうだな、君に似合うのは…」

これなんかいいんじゃない？指さしたセットアップを見てきゃあきゃあと喜ぶ彼女たち。別に一人に嫌われようが、こうして俺といることを楽しんでくれる人だっている。だから別に、構いやしないのだ。

ただ――嫉妬や羨望の混じった嫌な視線はそんなものだと流せるけれど、葛城Aの、あの純粋混じりけ無い敵意のこもったあの視線は、何故だか思い出すたびにちくりと胸のどこかが刺されたような気分になるのだ。
それは少しだけ、自分の中で気になる痛みだった。

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