《B-PROJECT》みじかいゆめ

フリー・ファイブ！_1（MooNs：わちゃっと） ページ40

今日は月とスッポンロケの日。朝イチからロケバスに乗り込んで向かう先は誰も知らされていない。…同行するわたしも。かつてどこぞの旅番組で、行き先を告げられずさらわれていくタレントを見て爆笑したものだけれど、いやはやこれは、出演しないわたしでさえ困惑の限りだ。
MooNsのみんなはさぞ緊張していることだろう、と後部座席に意識を向けると、

「みんなっ、古今東西しようぜっ」
「狭いんだからあんま騒ぐな」
「古今東西って何？」
「え、リーダー知らないんですか？」
「…今と昔、東と西という意味だ」
「ピーちゃん、そういう意味じゃないっしょ！」
「だから暉うるせえって」

野目くんが大きなため息をついた。いつも通りのやりとりに、緊張がほぐれてくすりと笑みを漏らす。

「どうしたの？」

ちらりと後ろに向けた視線に気づいた増長くんが声をかけてくれる。

「ううん。どこに行くかもわからないのに、すごいテンションだなと思って」
「ああ、オマエは俺らと同じバスで移動すんの、初めてだよな」

マネージャーの癖に、と野目くんも会話に加わる。うん、とわたしは頷いた。
MooNs５人が毎回体当たりロケを敢行する冠番組、深夜バラエティ「月とスッポン」。色んな分野のロケがあるけど、この五人はそれぞれ個性的だし、得意分野も様々なので、ちゃんとそれぞれにスポットライトが当たりつつ笑いも取りつつ、かっこよさも見せつける、そんな素敵な番組なのだった。
ただ、わたしは同じ事務所のキタコレのマネージャーも務めることが多く、一緒に営業に出るのはそちらの方が多い。だから月スポロケに同行するとしても遅れて行くとか、別の車で行くとか、そんなのばかりだった。

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