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『...』
左「おい」
『...』

車に乗ってからずっとこの状態だ
まぁ、この時間は人が多いし無理もねぇだろうけど

左「A!」
「はひっ!?」

よほど驚いたのか体を上下に大きくびくつかせたものの
やっと反応した

左「車ん中だし誰も寄ってこねぇよ。外じゃなくて俺の方見てろ」
『は、はい...』
左「いつからそうなったんだ?」
『7年ほど前からだと思います...』

左「それまでは普通に話せてたのか?」
『多分...』
左「多分って何だよ」
『覚えてないんです...』
左「は?」
『その...7年前事故にあったらしくて、その時に頭を強く打って...』
左「記憶喪失ってやつか」
『はい。事故に会う前の事は父から教えてもらったことしか知らないんです』

んな状況の娘を1人で暮らさしてんのかよ

『覚えてるのは病院で目が覚めた時からで、周りにいた看護師さんに話しかけられた時、声が出なくなって...』

事故のショックってとこか

左「記憶はほとんど戻んねぇままなのか?」
『はい...』
左「父親の事は覚えてたのか?」
『いえ、覚えてなかったです。ただ、母の事は少しだけ記憶があって...3人の家族写真を見せてもらって、それで父なんだなと...』

親父の言ったってのもあんだろうけど、こいつ自身外の世界がほとんど恐怖でしか無かったんだろうな。

左「悪ぃな。暗い話させちまって」
『あ、いえ!逆にずっと私なんかの話ですみません...でも、聞いてもらえて少し落ち着きました』

顔は笑ってるが目はほんのり赤く染まっている

『...!?さ、左馬刻さん?』

気づけば俺はAの手を握っていた

左「嫌だったら離せ」

Aは今度は顔を赤く染め黙ったまま俺の手を握っている

俺の手の中に収まる小さく今にも折れちまいそうな手を
どこか愛おしく感じてしまいそっと握る手に力を込めた

『左馬刻さんって、優しいですよね』
左「んな事ねぇよ」
『そんな事あります!私なんかを気にかけてくれて...』
左「お前は、俺に寄ってくる女共とは違う匂いがした」
『えっ。確かに香水はつけてないですね』
左「...そっちじゃねぇよ」
『へ?』

たまに思うがこいつって天然ってやつなのか

左「俺に寄ってくる奴らは基本金か体目当てだからな」
「か、体...」

徐々に耳が赤くなっていくのが目に見えて分かった
面白ぇやつ

左「意味は分かんだな?」

わざとらきく聞いてみれば、沸騰しそうなくらいに顔を赤くして俯いた

しばらくの間今まで抱いた女の話をしてAの反応を見ながら遊んだ

作者の騒がしい独り言。→←-6-



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作者名:紅兎 | 作成日時:2018年11月29日 0時

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