第12話 by暁月 ページ12
復讐心を今まで抱いたことがあっただろうか。
そう結城遥が頭をひねって考えたのは1度や2度どころではない。だがそれを声に出したところによって何も変わらないのはずっと昔にもう気づいている。主張したってそれだけ処刑が早まるのだ。
「何をしましょうか……」
何もすることがなく、暇な遥はそう呟きながらゆっくりとベッドに腰かけた。ここのベットは柔らかいと言うには程遠いのだ。飛び込んだりしたあかつきにはきっと身体を痛めるであろう。ちなみに遥は今まで1度も試したことがないし、これからも試すつもりはない。
だが一瞬ふと思い出したような顔をした彼は枕のしたに手を突っ込んで1冊のノートを取り出した。別に何の変哲もないノートである。
そしてまた座り直すとそのノートを開いてページをめくっていった。
「……別に希望とかは抱いていないんですけどね」
遥はノートをめくりながら言い訳がましく言った。ノートには細かい文字で見張りの行動パターン、隙のできる時間帯などが記されている。といってもそれは2ページ程で終わっているが。
来たばっかりの時はこんなところさっさと抜け出したいと、このノートに簡単な脱獄の計画を書き留めていったものだ。残念ながらここに自分がいることで実行しなかったことが証明される。
また枕の中にしまおうと彼は考えたのか体勢をくずして後ろを向いた。
……が。
突如彼の頭に、諦めていた脱獄の計画を成功させることができるかもしれないという不思議な感覚がやってきた。
そうだ、今なら一揆で取ったいくつかの武器がある。昔はきっと対抗できないだろうと諦めていたのだ。夜の住人たちも反抗されて大変だろうと思うがちょっとお付き合い願いたい。
あわただしく立ち上がり、遥は罪人共有スペースに向かっていった。確かここに『一緒に逃げませんか』という乱雑な文字でかかれた紙切れが落ちていたはすだ。
共有スペースに到着して見てみたが残念なことにその紙切れはなくなっていた。そこで遥はノートの1番後ろのページを切り取ってそこにメモを書くことにした。
『ここから逃げ出したい方へ』
そう几帳面な文字で書いてノートの上にのせて、それを分かりやすい位置に置いた遥は満足げに罪人共有スペースを出ていった。
もうそろそろ夜の国の生活には飽きてきたところだ。流石にこれだけの長さ、こんなところに入れられたら反抗期にもなりますよね。遥はそう愉快げにいたずらをするときの顔で笑った。
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カルク(プロフ) - 更新しました!! (2019年7月17日 8時) (レス) id: 46db662a70 (このIDを非表示/違反報告)
カルク(プロフ) - 更新させていただきます! (2019年7月17日 7時) (レス) id: 46db662a70 (このIDを非表示/違反報告)
nekoarisu(プロフ) - 更新させていただきました! (2019年7月16日 21時) (レス) id: 322193fd57 (このIDを非表示/違反報告)
nekoarisu(プロフ) - 更新させていただきます! (2019年7月16日 21時) (レス) id: 322193fd57 (このIDを非表示/違反報告)
味噌鯖 - しました! (2019年7月16日 15時) (レス) id: 9ffca39a54 (このIDを非表示/違反報告)
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