伍拾壱 “〃 (3)” ページ9
「貴方は長身痩躯の見た目に反して巨漢をも吹っ飛ばす程の腕を持つ男性だと風の噂で聞きました。それにもう逃げ切れる自信もありません、どうぞ煮るなり焼くなり好きにして下さい」
『煮るなり焼くなりだなんて物騒な事しませんよ。後、何か誤解されていますが一応私の性別は女です』
少し困った様に笑えば坂口さんは驚いた顔をして申し訳なさそうに視線を逸らして頭を掻いた。
「……それはとんだ失礼を」
『ふふ、よく間違われるのでお気になさらず。組織内でも私が女だと初見で気付いたのは首領と太宰さんだけですので』
胸もサラシを巻いてるので余計に判りにくいらしいです、と付け加えたら微妙な顔をし乍ら納得された。
『では、お手をどうぞ?』
異能を解除して足が動けるか確認した後、手を差し伸べたのだが一向に手を取られない。
……流石に此処迄云って未だ何かするなんて思われているのなら、どれ程私は危険人物認識されているんだと溜息を吐きたくなる。
「一応、手は縛るものだと思っていましたが」
『……?そういう御趣味があるのなら調達してきますが?』
「断じてありませんから!」
そういう趣味は無かったらしい。
全力で突っ込まれた後、渋々手を取ってくれたので笑っていると睨まれた。
*
地下水路から出て来ると追跡部隊の隊長を任されている男が走って来た。
そして手を繋いでいる私達を見て一瞬固まったがハッと気を取り直して私に向き直る。
「Aさん御無事でしたか!今直ぐ捕縛用具を……」
『この通り大丈夫ですよ。後、私は最下級構成員なのでもっと気楽に話して下さいませ。それに其の必要はありません、こうして手を繋いでますし……ね?坂口さん』
「……は?」
「それで普通納得しませんよ」
繋いだ手を軽く挙げて見せれば隊長の彼は変な顔をしたまま固まってしまった。
オマケに坂口さんは溜息を吐き、額に手を当てて呆れた表情をしていた。
『まあ兎に角安心して下さい。それより早く帰りませんか?皆様も六ヶ月もの間、気を張ってお疲れでしょう。私から皆様が捕らえたと報告致しますので今日ぐらいゆっくりと御休みになるべきですよ』
「あ、有難う御座います……!」
追跡部隊の皆が一斉に頭を下げるので慌てて顔を上げさせ、楼閣へと戻る様に促す。
……最近ポートマフィア内の階級というものが判らなくなってきた。
もう少し皆は私が最下級構成員だという事を判って欲しいのだが。
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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時