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伍拾弐 “〃 (4)” ページ10






あるポートマフィア傘下の会計事務所の隠し部屋を前に、私は首領から依頼された書類や遺品等を手にしたまま、扉を三回叩敲して入った。


相変わらず彼は椅子に座り、机に肘をついて不機嫌そうな顔で黙って此方を見ていた。


不遜で退屈そうで“自分はこんな辺境にいるような人間じゃない”という不満が体中から噴出している。


あの後、私は彼を首領の前に連れて行った。
首領は最初から抜群の情報操作手腕を持つ彼を(ゴミ)のように殺す気は無かった。
(手を繋いでいる事に対して執拗く問われたがアレは一体何だったのか、今でも疑問に思うが)


そもそも、今回の私の任務の詳細は“彼を必ず生け捕りで首領の元まで連れてくる”というものだった。
そして首領から持ち掛けられた提案をのんだ彼は第二の人生が始まったという訳だ。




『此処の仕事はもう慣れましたか?』


「そりゃあ一週間もあれば慣れますよ」


『おや、知らないのですか?此処に配属された方々は基本三日と()たずに飛び出して行くんですよ』


「ええ、聞きましたよ。ですがその辞めた方々の根性が足りなかっただけでしょう」




手渡した書類と遺品等を見て、記帳していく様子はもう何年もこの組織に所属している古豪(ベテラン)の様にも見えた。


待っている間も暇だったので周囲を軽く見渡した。
矢張り此処もあの場所に似ている。
私と修治が初めて炳五と出会ったあの場所に……腐った佃煮の話が懐かしい。




「Aさん終わりましたよ、確認を……ボーッとしてどうしたんです?」


『……いえ、少し昔を思い出しまして』




怪訝そうな顔で見る坂口さんに苦笑しつつ、渡された資料を見ると驚いた。
任務で亡くなってしまった四人の構成員達の生き様が、彼等がどういう人物なのかを之を見ただけで容易に判る事が出来た。


まるで之は────。




『死者の人生録、ですか』




私の言葉に坂口さんは虚を衝かれたようだった
彼の異能は確か《堕落論》_モノに残った記憶を読み取る、記憶抽出能力だった筈。
それを使ったからこそ、此処迄正確に一人一人の人生を纏める事が出来たのだろう。




「首領は厭がるでしょうね、この記帳の仕方を」


『確かに之は戦略上何の価値もない情報を集めた記録です』




一通り確認し、何もミスが無かったので矢張り彼の技量の凄さに感激する。
書類を纏めて坂口さんに返し乍ら私は笑った。




『しかし、気に入ると思いますよ』

伍拾参 “〃 (5)”→←伍拾壱 “〃 (3)”



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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時

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