肆拾玖 “とある電脳潜士 (1)” ページ7
最近組織内で或る噂が広まっていた。
その噂とは或る男が横浜を知り尽くした組織きっての追跡部隊から六ヶ月も逃げ続けているという話だった。
楼閣内にある休憩所で追跡部隊の一人が苛立ち乍ら煙草を吸っていたのは未だ記憶に新しい。
余程首領や隊長からの圧が凄かったのだろう。
にしても彼等から六ヶ月も撒くとは可也の手腕の持ち主だ。
「おや、Aじゃないか。もう次の任務かい?最近Aとゆっくり過ごせないって森さんに文句云ってやろうかな……」
『ええ、今噂の
「Aが云うのなら止めるけど、もう少し構ってくれてもいいのだよ?……嗚呼、例の男か」
廊下でばったり出会った太宰さんに手持ちの資料を見せると少しだけ読んでから興味無さそうに返された。
「じゃあ頑張ってね。それ終わったら早速飲みにでも行こう!善い店を見つけたのだよ」
『太宰さん、未だ貴方は成人してないですよ?ノンアルコールにしましょうね』
「私には何にも聞こえなーい。んじゃ、待ってるから早く帰って来てね」
そう云い、彼は手をヒラヒラと振って自室へと戻って行った。
……その部屋に中也さんが普段の仕返しに犬を大量に放っているとも知らずに。
『却説、私も徐々向おう』
*
場所は変わり、現在私は貧民街に居る。
相変わらず此処の空気は澱んでいた。
まあ前世で私は貧民街育ちだったのでそこ迄気にしないが。
慣れ親しんだ様に街を歩き、事前に確認した配置場所についてから、近くにある配管に座り足を組んで右手の親指を口唇にあてた。
今回の捕獲対象である電脳潜士についての資料を思い出す。
彼はギャングと手を組んで企業の金を盗み出す計画を立てた。
関係者を装って銀行の貸金庫を開け、株券をひとさらい盗み出して金に換えようとしたのだ。
そしてその試みは見事に成功し、彼と仲間は相当額の金を得た。
だが、それはべっとりと血に塗れた金だった。
その貸金庫と株券は、マフィアのフロント企業のものだったのだ。
彼等はマフィアの懐から財布を盗んだに等しい。
当然乍ら彼等は追われる身になった。
吠えもせず、音も立てず、唯銃を手に夜を何処までも追ってくる私達黒い猟犬から──。
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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時