漆拾壱 “〃 (3)” ページ30
ビーチバレー、ビーチフラッグ、西瓜割り、砂の城作り、砂山崩し、サーフィン等々、挙げるとキリが無い程の遊びを楽しんだ今、もう空は茜色に染まりつつあった。
私は昼の約束通り、太宰さん達が居ると聞いた場所に来たのだが、そこには人一人誰も居なかった……道でも間違えたのだろうか?
キョロキョロと辺りを見渡すと木と木に括り付けられているハンモックの方で見慣れた赤毛が揺れているのが見える。
恐らく寝ているのだろう。
極力足音をたてないように気を付け乍ら近付くと案の定、彼は寝ていた。
普段から彼の寝ている姿は見た事が無かったので少し新鮮な気持ちになる。
心地善い風に吹かれて、ゆらゆらと揺れている赤毛に、そっと手を伸ばす。
太宰さん程では無いが、思いのほか彼の髪はフワフワだった。
ある種の感動を覚えた私は起こさない程度に彼の頭を撫でる。
数分後かは判らないが満足した私が手を退けようとするとパシッと手首を掴まれた。
ゆっくりと目を開けた彼に内心焦る。
裏社会で生きる私達は睡眠が浅い者が多いのに加えて気配も敏感だ。
近付くだけでも気付く者が多いのに、頭を撫でられて起きていないなど可笑しい話だった。
「もう善いのか?」
『……へ?』
発せられた彼の言葉に焦っていた気持ちが一気に抜けた気がした。
現に私の口からは情けない声が出ていた。
「太宰がよく云うのも判る気がした。Aは撫でるのが上手いな」
『そうでしょうか……と云うよりも怒らないので?』
「……何にだ?」
『いや、睡眠を妨害してしまったので』
「別に気にしていない。寧ろ今起きないと夜寝れないからな」
彼が善いのなら別に構わないが少し気恥しいのは私だけなのだろうな。
これ以上考えない様に話題を逸らそうと気になっていた事を聞いた。
『御二人は何方に?』
「飲み物を買いに行くと云っていた。序に仁も呼んでくるらしい」
成程、だから居なかったのか。
飲み物なら私が此方に来るついでに買ってこれたのだが、そこは彼等なりの気遣いとして受け取っておく事にしておこう。
(今日は休め、遊べ、仕事はするなと散々海に来る時に皆に云われた)
「A、彼処行かないか?」
作之助さんが指さしたのは海に突き出る様に作られた小さな木製の桟橋だった。
構いませんよ、と云うと手首を掴まれたまま連れて行かれる。
別に逃げもしないのに今日はよく掴まれるな……なんて事を考え乍ら黙って手を引かれた。
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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時