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肆拾参 “善い案 (1)” ページ1

現在私は昇降機の中で胃がキリキリと痛むのを堪え乍ら、階数と共に数が増える電子版をボーッと眺めていた。


それは丁度五分前。
首領に報告書を提出しに行った中也さんが私に首領が呼んでいたとゲッソリした顔で云われた事から始まった。


ゲッソリしていたのは初三徹を経験したからであって首領が……と何やら云い訳めいた説明の方では無いらしい。
が、明らかに首領の部屋で何かあったのだと其の場に居た誰もが思った。



そんな中也さんを見てから私は胃がキリキリと悲鳴をあげ始めた。
若しや遂に馘首か?それとも役立たずは肉壁になれと?はたまた敵組織の処に一人で殲滅任務か?


考え始めたらキリが無いので、もう止めた。
脳の働きを強制終了して電子版を眺める事に専念した。まあ、それが何より一番胃にきたのだが。



昇降機が最上階に着いたと同時に軽快な音を鳴らして扉が開いた。



頭では行きたくないと思いつつ足は首領の執務室へと向かっていく。
執務室へと着くと前に立っている黒い背広姿の見張りに名を告げた。
見張りは「御苦労様です」と何故か労いの言葉をかけて道を開けてくれた。


執務室へと入るフレンチ・ドアの前で自分の服装を再点検し、一度深呼吸をしてから声をかけた。




『首領。Aです、這入ります』


「ねえエリスちゃん、ドレス着てみよう、一瞬、ちょこっと!お願い!」




不穏な台詞が執務室から聞こえた。
前世でもこの体験はした事があるが、如何せん慣れないものは慣れない。
そこで私は何も聞こえないふりをして三秒待ち、再度呼吸を整える。




『首領。Aです、這入ります』


「ああっ、脱ぎ散らかしちゃあ駄目じゃないか。高価(たか)かったのだよ、そのドレスは」




再び不穏な台詞が聞こえた。
仕方が無い。此処は何も知らず偶然扉を開けてしまった間の悪い部下になる事にしよう。




『失礼します』




言葉と同時にフレンチ・ドアを開くと、広い執務室を二人の人間が駆け回っていた。
首領と十歳になるかならないか程度の幼女。
幼女は半裸で首領を睨み付けている。




「いやよ、絶対いーやっ!」


「お願い、エリスちゃん。ちょこっとで善いから、ね?私が丹誠込めて選んだのだよ。ご覧よこの桃色のリボンのドレス!絶対似合うと思うよ!」


「きれいなお洋服は嫌じゃない。リンタロウの必死さがいやっ!」


「何時もの事じゃないか、ほら追い詰めたぞお!」




……来て早々帰りたいと今日程思った日は無い。

肆拾肆 “〃 (2)”→



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黒龍(プロフ) - Mさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います^^ (2019年11月23日 17時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
M - とてもおもしろかったです。 (2019年11月23日 1時) (レス) id: 5a0fa58d7d (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - りーこさん» 有難う御座います!頑張って続き書いていきますね (2019年6月24日 12時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
りーこ - 続きが楽しみです (2019年6月24日 6時) (レス) id: 140e75a81a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2019年6月21日 21時

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