moon child(kn) ページ1
日光を浴び、きらきら輝く金髪の彼を一目見た瞬間、恋に落ちてしまった。幸いにもクラスは一緒なものの、直接話したことは一度もない。本人にバレないように、いつも遠くから目で追うだけ。私とは住む世界が違う、遠い存在の人なのだ。
金髪の彼、コネシマくんはいつも制服を着崩し、また遅刻してくる事も多く、ヤンキーのようなその派手な風貌と加えて寡黙で口数が少ないため近寄りがたい雰囲気を醸し出している。小耳に挟んだ話によると、喧嘩っ早さとその強さから裏では狂犬、と呼ばれており他校では恐れられているらしい。他のクラスには仲の良い友達が居るらしく、一度ちらっと見かけたがコネシマくんと同じく他を寄せ付けないオーラが凄まじかったのを覚えている。
一方の私は、コネシマくんたちと反対の意味でクラスから浮いていると思う。今時絶滅寸前の黒髪三つ編み、そしてスカートも折らず学校指定のカーディガンを着用、校則をきっちりと遵守している。自分で言うのも何だが、所謂マジメちゃんという訳だ。自分としてはみんなみたいに染髪してみたいし、スカートも折りたい。しかし親が厳しく、怒られるのが目に見えていたので意気地なしの私は相談することもなく諦めた。尚且つ成績にも厳しいため放課後を勉強に費やすことも多く、その分友人と遊ぶことが少なかったからか入学時は仲が良かった友人とは徐々に疎遠になった。
そんな私は今日も放課後１人、図書館で参考書を広げる。図書館には珍しく私の他には人は居ない。明日は土曜日のため、皆早く帰ったのだろうか。開け放たれた窓の外からは運動部のものと思われる、賑やかな声が聞こえる。帰宅部の私とは無縁の青春の日々に憧れを抱く。そんなきらきらした世界から目を逸らすかのように、私は夕方のひんやりとした風が吹き込んでくる窓を閉める。それまで聞こえていた賑やかな声が消え、図書館を静寂が包み込む。世界から隔離されたようだ。風で少し乱れた三つ編みが鬱陶しくなったので解き、再び参考書に目を落とす。
「誰かと思ったらAさんか」
「えっ」
今日はこれぐらいかな、とキリがいいところで参考書を閉じた瞬間、誰も居ないはずの図書館から声がした。声の元を辿ると目の前に何故か私の隣にコネシマくんが立っていて、一瞬幻覚かと思ったがどうやら本人のようだ。戸惑う私を他所に、コネシマくんは窓閉まっとると暑いな、と汗を拭い言葉を続ける。
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作者名：柊 | 作成日時：2018年3月21日 18時
