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赤side〜
「…なぁ、宮近ってなんでずっと学校休んでたの?」
「確かに。今日の体育も見学だったし…ずるくね?」
「…っ、」
中学上がっても、元々弱かった心臓が、俺自身の成長に耐えきれなくて、入退院を繰り返していて、初めて中学校に行ったのは、中学一年の夏休み明けのことだった。
そんなカッコ悪いことを誰にも言えなくって。
今思えば、こんなに休む俺を不思議に思うのも仕方ない事だなって思えるけれど。
「……なぁ、って聞いてんだよ、」
トン、
そんな強い力では無かったけれど、肩を押された。
軽くその場に尻もちをついて見上げれば、クラスメイトの悪意で満ちたいくつもの顔。
_______大丈夫、海斗が笑っていればきっと沢山お友達が出来るからね?________
今は居ないお母さんに言われた事を思い出して、必死に笑顔を作る。
「…なんで笑ってんだ、コイツ、」
「何ヘラヘラしてんだよ、馬鹿にしてんの?」
泣くな。
泣いたら、心臓に負担がかかって、また学校に行けなくなっちゃう。
「うわ、泣きやがった、」
行こ行こ!なんてパタパタと走って俺から逃げていく足音を聞きながら、俺は意識を手放した。
.
「…ぁ、良かった、気がついた?……具合悪いところない?」
目を覚ませば、白い天井に、いつもの看護師さん。いつもの光景。
「…ね、海斗、中学ってどんなところだった?」
「こら、うみくん、まだ海斗くん起きたばっかりなんだから…海斗くんしんどくなっちゃうでしょ?」
物心ついた時から隣のベッドで、俺の戦友の海人。
「…海人、具合悪いの、?」
そう聞いてしまうくらいに、海人は顔色が悪い。
「実はうみくんもね、昨日まで熱があって、軽い発作を何度か繰り返してるの。…だから、海人くんにもベッドで大人しくしてて欲しいんだけどねぇ……」
「……ぅるせぇ。…で、どうだった?中学校、」
いいなぁ、俺も行きてぇ!なんて大きな声を出した海人は、また看護師さんに怒られた。
海人は、俺と同じ歳の中学一年生だけど、病気の為に、中学校はおろか、小学校にも通った事がないらしい。
「なぁ、どうだったんだよ…ねぇって!」
キラキラ目でそう聞かれれば、とても本当のことを言う気になんてなれなくって。
「…ぅん、楽しかったよ、」
俺は、この時、初めて海人に嘘をついたんだ。
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うらの(プロフ) - 初めまして。作品があまりに素敵で感動しました。随所に心がまっすぐなmtさん心がきれいなmcさんの気持ちが見れてとても心が暖かくなりました。素敵な作品をありがとうございました。 (9月22日 23時) (レス) @page50 id: 188a7a4fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紗彩 | 作成日時:2022年1月21日 0時